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在留資格認定証明書とは何か

在留資格認定証明書制度は、査証とはまったく異なります。また、在留資格そのものの証明書でもありません。在留資格証明書でもありません。いわば、査証の前段階の制度とも言えるもので、査証発給を迅速化する効果があります。そもそも査証が在留資格に向けた推薦状なのですから、認定は、在留資格の推薦状の、そのまた推薦状、とも言えます。

初級ビザ講座3「在留資格認定証明書とは何か。」

この制度を理解するには平成2年にこの制度が導入される以前の査証発給方法を知っておく必要があります。筆者が、山崎哲夫元東京入国管理局長の入国管理法の講義を受けたときにお聞きしたところによれば、この制度が導入される以前は、以下のようなものでした。

在留資格認定証明書とは

仮に日本の横浜の中華街にあるA中華料理店がBさんという優秀な料理人を技能の在留資格で招聘したいと考えたとします。お店の経営を立て直すために、何としてでも早急に招聘したいとのことです。
この点、日本に上陸しようとする外国人は、まず最初に在外公館に査証の申請を行います。ですからBさんもまず在外公館に直接申請することになります。しかし、在外公館限りでは、判断することはできません。そこで、日本の外務省に申請書類を回送して査証発給の可否を照会します。ところが、外務省のほうでも外務省限りでは査証発給を判断できないのです。そこで、外務省は、入国管理局のある法務省と協議することになります。協議の依頼を受けた法務省本省では、各地方入国管理局に対して、調査・審査の指示を行います。この時点でようやく地方入国管理局にまで書類が回付されるのです。ただ、当時は法務省のいわゆる基準省令が存在しなかったために、職安等の労働関係の省庁と協議したりしていました。また、この段階で初めて在日の招聘側の関係者に対して事情聴取を行い、A中華料理店に招聘理由を聞いたり、どうして日本人ではだめなのか、などということを聴取していたのです。さて、聴取の結果、地方入国管理局ではようやく査証発給が相当であるとの判断に至りました。そこで、それを法務省の本省に回答します。次に法務省ではそれを外務省に回答します。さらに外務省ではその回答結果をもとに元の在外公館へ指示します。こうして指示を受けた段階で当該在外公館は、査証の発給ができることになります。ただ、ここまでたどりつくのに様々な省庁の照会を経由していたために半年もかかってしまいました。企業経営にとって半年は長すぎます。
この点、ようやく査証の発給が可能になったとき、時既に遅く、A中華料理店は、経営改善の遅れのために倒産していました。また、Bさんのほうも半年も待てず他の国の料理店に行ってしまい、日本へ来る意思はなくなっていました。
そこで、このような結果が不当であるとのことから導入されたのが、「在留資格認定証明書制度」です。これによりそれまで複雑な経路で照会していたものを省略できるようになり、査証の発給が短時日で行われるようになりました。そして、この制度を担保するために、関係省庁の間で協議を行い、法務省令で、審査基準を明記しました。実はそれまでは明確な基準がなかったのです。聞くところによると地方入国管理局にはなく、法務省本省の担当部署に「部外秘」としておいてあり、入管の職員には知らされていなかったともいいます。ですから、許可されるのか否かは全く分からず、「許可されたら許可です。」としか答えられなかったという話も聞きます。
これを「基準省令」と言います。これも現在では不明確性が指摘されていますが、何もなかった時代からすれば大きな前進といえます。
具体的には、まず、在日の関係者(招聘人)が、代理人として各地方入国管理局へ、在留資格認定証明書を申請します。そして、当該入管では、併せて導入された基準省令に照らして審査します。事案にもよりますが、早ければこれは3-4週間程度で交付されます。次にこれを今度は海外にいる申請人たる外国人に送付します。そして、外国人はこれを査証の申請書類に添付します。すると、在外公館では、既に日本の地方入国管理局での基本的な審査が終わっているので、原則として、遅滞なく査証が発給されるのです。
要するにそれまでの照会の順序を逆転させたような仕組みです。


若干の応用

たとえば在留資格認定証明書の申請は、在留資格の変更申請とどう違うのでしょうか。誤解され易い点を解説致します。

Q:私は外国人の彼がいます。彼を日本に呼ぶにはどうすればよいでしょうか。また、訪問ビザから就学ビザへの変更申請は可能でしょうか。

A:まず「訪問ビザ」などという名称のビザはありません。ネット上の情報でよく勘違いされ易いのが、専門用語の取扱です。一般に「訪問ビザ」などと表現する場合、念頭に置かれているのは、短期滞在の査証で、上陸の目的が、知人や友人の訪問のことを想定していると思われます。
したがって、このような質問の趣旨は、通例、「短期滞在」の在留資格から「就学」の在留資格への変更申請は可能ですか、という質問になります。
さて、これへの回答は、制度的には可能ですが、実際にはそれは無理な場合が「多い」、という回答になるでしょう。順を追って説明致します。まず、短期滞在からの変更は「やむを得ない特別の事情に基づくものでなければ許可しないものとする」とされます(入管法20条3項但書)から、原則として許可されません。これが第一のハードルです。
次に、とりあえず短期で呼んで頃合をみて、日本語学校へ入れて就学へ変更するというのであれば、日本語学校の入学受付の期限等の見地からみて、困難です。短期の在留期限は最高で、当初は90日しかなく、また余程の知識と根性と条件が無いと更新もできません。然るに、そのような無計画な状況に間に合うように「就学」の在留資格で受け入れ可能なような日本語学校は通常ありません。これが第二のハードルです。
なお、就学ならば在留資格認定証明書の申請が普通と解されますが、これは通例は、短期で来てから申請して期限内に間に合うようなものではありません。また、変更申請と違い、在留資格認定証明書の申請中に期限を徒過すれば、不法滞在になり、逮捕や収容の対象とされます(変更申請ならば期限を徒過しても、審査中に、直ちに「不法」滞在になるようなものではない。)。

Q:外国で知り合った女性と結婚することになりました。日本へ呼び寄せしたいと思います。ただし、そうするためには「在留資格認定証明書」を入国管理局で交付されねばならないと指導されました。となると、外国で結婚してから、一度日本に戻らなければなりませんか。また、「在留資格認定証明書」があれば、それのみで日本ビザの申請は可能ですか。

A:在留資格認定証明書を申請する際に、日本へ戻る必要があるかどうかは、在留資格認定証明書の申請代理人が日本で申請可能な状況にあるかどうかに拠ります。然るに、「日本人の配偶者等」の在留資格の申請代理人は、「本邦に居住する本人の親族」になり、その親族の範囲は基本的に民法によって決まります。したがって、日本人側の両親等が日本で申請することは可能となるので、日本人側配偶者が日本にいなくとも申請できる場合は多いでしょう。この点もよく誤解されている点です。
次に、「在留資格認定証明書」があっても、なくても、ビザ(査証)の「申請」それ自体は可能です。たとえば、日本に親族がおらず、しかも当事者が日本へ行くのが困難で、「在留資格認定証明書」の申請を行いがたい場合もあるでしょう。そうした場合にまで「在留資格認定証明書」を要求することは不合理です。
また、これもよく誤解されていますが、「申請」と「許可」は全く別です。驚くほど多い不適切な質問に「申請できますか?」という表現があります。「申請」はほとんどの場合、可能です。しかし、「許可」は全く別の問題です。「申請」しても不許可になることは無数にあります。
この点、在外公館の行政指導には幅がありますが、一般には、「在留資格認定証明書」を求めるのが原則になっています。
逆に、「在留資格認定証明書」があっても、なくても、ビザ(査証)の「申請」によって、査証が発給されるかどうかは、何ら保障されていません。ただ、あったほうがよいのです。

Q:現在住んでいる外国で配偶者の「滞在許可証」を取得する方法と、又は、日本へ入国してから変更する方法と、いずれが適切でしょうか。
A:まず、現在住んでいる外国で、日本の「滞在許可証」なるものを得ることはできません。そもそも「滞在許可証」なる名称の証明書はありません。
もし、ご質問の趣旨が「在留資格認定証明書」のことを指しているとすれば、「在留資格認定証明書」は在留や上陸の許可ではありません。外務省の在外公館等に宛てて発行された一種の推薦状のようなものです。
他方、もし、ご質問の趣旨が「査証」のことを指しているとすれば、「査証」は在留や上陸の許可ではありません。法務省の入国管理局に宛てて発行された一種の推薦状のようなものです。
次に、日本へ入国してから変更する方法と、いずれが適切かというご質問ですが、そもそもご質問の前提が不適切です。なぜなら、正確には大別して、以下の四つの方法があるからです。そして、どれがよいかは個々の事情で異なりますが、ご質問では個々の事情は分かりません。こうしたことも一般にはほとんど理解されていません。

1.「在留資格認定証明書」が交付されて、それから査証申請する方法。
2.「在留資格認定証明書」を得ずに、いきなり査証申請する方法。
3.日本に来てから、「短期滞在」から、いきなり、「日本人の配偶者等」に変更申請する方法。
4.日本に来てから、「短期滞在」から、「在留資格認定証明書」を経由して、「日本人の配偶者等」に変更申請する方法。

‡記事執筆‡イミグレーション戦略コンサルティングファーム行政書士あさひ新日本 代表 古川 峰光

‡記事執筆‡イミグレーション戦略コンサルティングファーム行政書士あさひ新日本 代表 古川 峰光

自身が国際結婚し、2万人以上の相談、20年以上の実績を有するイミグレーションコンサルタント兼行政書士。イミグレーション戦略の基盤となる渉外戸籍のマネジメント、在留資格のプログラム、来日後のライフステージに応じたサポート、永住権や国籍までの羅針盤になるようなコンサルテーションを実施。さらには、国際家族を形作ることに関わるアドバイザリー業務をコラボレーション。行政書士あさひ新日本は総合的なインバウンド・イミグレーションの真のコンサルティングサービスとしてご提案致します。

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