ここでは永住ビザに関して、専門のイミグレーション戦略コンサルタント兼行政書士がQ&A形式でお答えいたします。
‡イミグレーション戦略コンサルタント兼行政書士からの永住ビザの一口アドバイス‡
永住申請で用いる証拠資料は場合分けが複雑に入り組んでいます。各地方出入国在留管理局によっても、差異が生じうるものです。また政府の政策ないし当該地方出入国在留管理局の政策や社会事情が変動すれば、それに伴って変化するものです。
永住の要件は、近年著しく厳格化されてきました。現在の許可率は、2人に1人は許可されないと言われます。日本人配偶者の状態からの永住申請については、一般に結婚生活がうまくいっているときは、永住申請は気づかないことも多いようです。そして、いざ離婚する段階になって初めて気づきますが、たいていは「遅かった!」という話になってしまいます。つまり、あくまで、日本人配偶者の在留資格が「形式的かつ実質的に」具備されていることが、原則的要件です。
- 永住ビザ法務Q&A
- Q1: 永住許可とは、どのようなものですか?
- Q2: 永住の要件は何でしょうか?
- Q3: 永住は何と言う法律に書いてありますか?
- Q4: 永住はいつ申請すればよいですか?
- Q5: 永住はどこに申請しますか?
- Q6: 永住の審査期間はどのくらいですか?
- Q7: 大卒である必要はありますか?
- Q8: 私は、日本に来て、11年になりますが、永住許可の見込みはどうでしょうか?在留資格は人文国際です。
- Q9: 私は、技術の在留資格で10年以上在留していますが、妻は、家族滞在のビザで途中から呼び寄せたため、まだ10年もありません。この場合、どのような申請が最もよいでしょうか?
- Q10: 私は投資経営のビザで、15年間、日本に住んでいますが、途中で、仕事の関係で、海外に転勤した期間が10か月ほどあります。この場合、どうなりますか?
- Q11: 私は「日本人の配偶者ビザ」ですが、やはり10年必要なのでしょうか?
- Q12: 夫婦関係のよしあしまで審査の対象になる、というのは、情報プライバシー権(憲法13条)の侵害ではないでしょうか?
- Q13: 私は、海外で婚姻し、その後、日本に来ています。この場合も、3年ですか?
- Q14: 私は、「定住者ビザ」ですが、何か有利になりますか?
- Q15: 私は日本人配偶者等でも、定住者でもないので、10年待たねばならないでしょうか?
- Q16: 私は、以前、駅前に放置してあった自転車を拝借し、警察のお世話になったことがありますが、許可されないでしょうか?
- Q17:頻繁に出入国を繰り返していますが大丈夫でしょうか。
- Q18:身元保証に関する資料とは
永住ビザ法務Q&A
Q1: 永住許可とは、どのようなものですか?
A1: 永住許可とは、在留期間が永久のものとなり、在留期間の更新の手続きが不要となるというものです。 この永住許可は、既に何らかの在留資格を有する外国人が永住者への在留資格の変更を希望する場合に、与えることのできる許可であり、在留資格変更の一種です。
そして、永住者になると、在留活動も在留期間も特段の制限はないので、それまでと比べて随分と自由になります。そこで、永住許可については、通常の在留資格の変更以上に、慎重に審査する必要があります。そのため、他のの在留資格の変更手続とは別の特殊な手続きが別途に用意されています。
また、永住者になると、金融機関から融資を受けやすくなる等の日常生活や仕事上のメリットもあります。そのため、実際、永住しようと思った動機は、家を購入しようと銀行等に融資を求めたところ、永住の在留資格の無いことを理由に断られたため、というものが多いです。
Q2: 永住の要件は何でしょうか?
A2: 基本的には、永住の許可の要件は、(1)「素行が善良であること」,(2)「独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること」、(3)「法務大臣がその者の永住が日本国の利益に合すると認めた」こと、という要件が必要です。
注意すべきは、これは許可の必要条件だが、十分条件ではないということです(「許可することができる。」と規定しています。)。要するに要件が具備されていても許可されるとは限らないということです。
このうち(1)(2)の要件については、永住許可の申請人が「日本人,永住許可を受けている者又は特別永住者の配偶者又は子である場合においては適合することを要しない。」とされています。これは、日本との結びつきの強い外国人については、要件を緩和し、在留生活の安定化を図るべきだあるとの趣旨です。
この点、(1)「素行が善良であること」とは、刑事責任等を追及された前歴の不存在や、税金等をしっかりと納めていることや、社会通念上、相当な日常生活を送っていること、等をいいます。
他方、(2)「独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること」とは、まず、(ア)日常生活において公共の負担となっておらず(たとえば、生活保護など。)、かつ、その有する資産又は技能等からみて将来において安定した生活が見込まれることをいいます。もっとも、申請人自身に備わっていなくとも、親や配偶者と共に構成する世帯単位でみた場合に安定した生活が継続できると認められる場合はこの要件を満たしているものとされています。
そして、(3)「法務大臣がその者の永住が日本国の利益に合すると認めたときに限り、これを許可することができる。」は、申請人に永住を許可することが,日本の社会、経済に寄与すると認められることが必要です。この許可に際しては、国土の条件、人口の動向等日本社会の外国人受入れ能力、出入国管理を取りまく内外の諸情勢その他諸般の事情を勘案して行われるもので、永住の許可を与える否かの法務大臣の裁量権は広範です。なお、現在有する在留資格の中での最長の在留期間を付与されていることも基本的要件です。
Q3: 永住は何と言う法律に書いてありますか?
A3: 出入国管理及び難民認定法という法律です。略して「入管法」といいます。
Q4: 永住はいつ申請すればよいですか?
A4: 準備ができ次第、申請するのが原則です。この点、在留期限切れ直前に申請するときは、必ず、従来の在留資格の更新申請も併せて行う必要があります。さもないと、オーバーステイ(不法滞在)になります。
Q5: 永住はどこに申請しますか?
A5: 地方入国管理官署の窓口です。
Q6: 永住の審査期間はどのくらいですか?
A6: 早いときは6か月程度ですが、もう少しかかることもあります。
Q7: 大卒である必要はありますか?
A7: ありません。大卒が要件となっている一部の在留資格とは異なります。
Q8: 私は、日本に来て、11年になりますが、永住許可の見込みはどうでしょうか?在留資格は人文国際です。
A8: 従来、「一般の」外国人の場合、20年が基本的要件だったのですが、近時、緩和されて、10年が「原則」となりましたから、見込みはあります。但し、見込みの有無はあくまで個々の具体的事情によるものです。時間の経過で当然に許可されるようになるものではありません。なお、科学研究所や大学の研究員等の場合、5年程度で許可される例もありますし、特例で5年未満でも許可される例もあります。なお、そうした場合、配偶者も付随的に極めて短期で許可される例が見られますので、配偶者が若干足りなくても、外国人同士の夫婦で同時に申請を試みてもよいでしょう。特例ケースでは、配偶者が在留3年程度でも、申請する価値はあります。なお、「家族滞在」の場合、「家族滞在」>「永住申請」、と、「家族滞在」>「永住者の配偶者(永配)」>「永住申請」、と二通りありますが、どちらでなければならないという法律はなく、実質的には差異が無いことがあります。
Q9: 私は、技術の在留資格で10年以上在留していますが、妻は、家族滞在のビザで途中から呼び寄せたため、まだ10年もありません。この場合、どのような申請が最もよいでしょうか?
A9: ひとまず、あなたが先に永住申請するとよいことが多いでしょう。許可されたら、その後に、配偶者につき、「永住者の配偶者」のビザ(在留資格)への変更申請をすることが可能です。永住権ないし永住の在留資格が与えられれば、配偶者は「永住者の配偶者」のビザ(在留資格)を得ることが可能になります。この在留資格は「家族滞在ビザ」よりもはるかに強力です。なぜなら、活動に特に制限がないからです。他方、「家族滞在ビザ」は、働くのに、資格外活動許可が必要であり、また、仮に資格外活動許可を得ても、仕事の内容は制限されます。
そして、このように、他方配偶者については、いったん、「永住者の配偶者」のビザ(在留資格)を経由したほうが、永住申請の際も、よりゆるやかに許可され得るという効果も考慮に値します。このように在留資格の種類や意義・要件・効果を勉強する必要があります。
Q10: 私は投資経営のビザで、15年間、日本に住んでいますが、途中で、仕事の関係で、海外に転勤した期間が10か月ほどあります。この場合、どうなりますか?
A10: 10年というのは、「継続して」いなければなりません。もっとも、再入国許可を得ていれば、継続していたものとされます。また、仮に、再入国許可を得なかった等により、不継続とされても、日本でのこれまでの在留状況を全体としてみて、許可される可能性はあります。実際にも許可されたことはあります。
Q11: 私は「日本人の配偶者ビザ」ですが、やはり10年必要なのでしょうか?
A11: その場合は、原則として、3年が最低限の必要条件です。但し、これまでの夫婦生活の内容まで審査の対象ですから、ご注意ください。中身の乏しい婚姻では、厳しくなりますし、場合によっては永住どころか、配偶者ビザの更新すら不許可になり、帰国する事態もあり得ます。
世間一般の評判によれば、日本人配偶者の場合の永住申請の審査は、甘すぎる場合もあるようです。たとえば、永住許可された直後に離婚される日本人が続出しています。結婚は、永住を取る道具だったのです。ケースによっては、子どもを産ませることまで道具にしています。そして、離婚後、本国に隠匿していた女性等を呼んで、「永住者の配偶者」として在留可能にさせるのです。「そこまでヒドイことをやるのですか?」という点ですが、海の向こうは「戦場」です。比喩だけではなく、本当に中東辺りなら、戦場で戦ってきた人もいます。また、死を覚悟で船底にもぐって、入国する人も多数いるわけですから、当然あります。
私のようなプロとしての実感においても、疑問符をつけざるを得ないケースを見かけます。経験上、そういうケースというのは、外国人側は、「大丈夫だから。」などと言いつつ(実際には不法滞在や偽造旅券で入ってきていて、別人になりすましていたりする等、少しも大丈夫でなかったりします。)、専門家に相談させないようにする場合もあります(特に女性側が日本人で、立場が弱い場合等。)。
アメリカの移民法系サイトで、婚姻等による身分系の移民を重視しすぎており、もっと就労系に重点を置くべきだとの議論を見たことがあります。
Q12: 夫婦関係のよしあしまで審査の対象になる、というのは、情報プライバシー権(憲法13条)の侵害ではないでしょうか?
A12: 確かに、もし、これが通常の日本人同士の夫婦につき、国が審査するのならば、当該行政行為は憲法に抵触することになりかねないでしょう。しかし、外国人の場合、「マクリーン事件」以来、基本的人権は、日本人よりも制限されています(最大判昭53・10・4民集32・7・1233)。
その判旨の規範ないし射程距離からすれば、この場合は「権利の性質上」、制限されていることになるでしょう。
なお、政策的理由は、偽装婚の防止等ですから、何の根拠もなしに調べているわけではありません。ただ、実務の運用に際しては、不必要な調査権の行使は比例原則上、認容されませんし、同時に日本人側のプライバシー権はストレートに憲法13条等の法規範が適用されることに留意する必要がありましょう。つまり、「公共の福祉」は必要最小限度の基準による内在的制約に留まると解さねばならないでしょう(憲法学会では通説ですが。)。
Q13: 私は、海外で婚姻し、その後、日本に来ています。この場合も、3年ですか?
A13: その場合は、「婚姻後3年を経過し、かつ、本邦で1年以上在留」です。なお、いずれも同居に注意してください。
Q14: 私は、「定住者ビザ」ですが、何か有利になりますか?
A14: その場合は、定住許可を受けた後、5年ですから、有利にはなります。ただ、定住者というのは色々な類型があります。たとえば、「日系人」の配偶者というのは、通常、「配偶者ビザ」ではありません。定住者ビザなのです。そして、もしその類型ならば、これまでの婚姻生活の状況等も審査対象になりますからご注意ください。
Q15: 私は日本人配偶者等でも、定住者でもないので、10年待たねばならないでしょうか?
A15: 例外的に日本への貢献を評価されて、5年程度で許可されることはあります。また、特殊なケースで、5年未満で許可されることもあります。ただ、もちろんあくまで「例外」です。たとえば、「外交、社会、経済、文化等の分野における我が国への貢献があると認められる者」は5年以上、さらに構造改革特区関連の特例永住では、5年未満であり得ます。
Q16: 私は、以前、駅前に放置してあった自転車を拝借し、警察のお世話になったことがありますが、許可されないでしょうか?
A16: これは「素行の善良性」の解釈の問題になります。一般には、占有離脱物横領罪(刑法254条)の構成要件に該当します。もし、違法・有責性も具備されれば、犯罪成立要件を充足し、また、通常、処罰条件も充たすことでしょう。ただ、微罪処分になったのか、起訴猶予か、公訴提起まで行ったのか、等によっても異なります。また、常習性があるか否か等でも異なりますから、一概に許可されないとは言えません。
Q17:頻繁に出入国を繰り返していますが大丈夫でしょうか。
A17:合理的理由があれば差し支えありません。
Q18:身元保証に関する資料とは
とても分かりやすいサイトで、非常に参考になりました。永住権の申請を近い内にしようと考えております。そこで、提出書類の1つとして、身元保証に関する資料で、保証人の最近1年分の所得証明書が必要となっていますが、身元保証人の責任はどのような範囲まで考えられますか?もし、差し支えなければ、教えていただけませんか?
A18:今のところは、民法446条以下のような責任はありません。但し、これも法改正で変わらないことの保障があるわけではございません。