「オーバーステイだが結婚したい」「なかなか結婚できない」とお悩みの方もいるのではないでしょうか。
オーバーステイしている状況で結婚を考えている方に向けて、この記事では結婚手続きの対処法や配偶者ビザ申請における重要なポイントについて詳しく解説します。
オーバーステイ中に結婚する際の法的な問題や手続きの適切な手順、必要な書類や費用についても触れていきます。これらの情報を参考にして、オーバーステイ状況を解決し、新たな人生のスタートを切りましょう。
オーバーステイになったらどうすれば良いのか?
オーバーステイになってしまったが、結婚したい場合、どのような対処法が適切かは個々の状況によって異なります。今回は、オーバーステイになった際に検討すべき対策や手続きなどを解説します。
また、オーバーステイの原因や期間とそれに伴うペナルティの関係、今後の配偶者ビザ申請への影響や再発防止策なども詳しく説明していきます。早期対応が重要であるため、具体的なアクションを踏まえた内容を提供しています。
状況を把握し、適切な対策を講じる
オーバーステイになったらどうすれば良いのか?結婚相手がオーバーステイのときはどうするのか?その最初のステップとして、状況を把握し、適切な対策を講じることが重要です。
状況の把握
まずは結婚相手の本人の滞在状況を正確に把握しましょう。ビザの有効期限や在留資格、不法滞在の期間などを確認してください。これらの情報が分からない場合は、パスポートや在留カード、あるいは仮放免許可証を確認することができます。
出国命令や退去強制の対応
不法滞在が発覚し、出国命令や退去強制が決定した場合、その指示に従い速やかに日本を出国する必要があります。結婚して出国し、配偶者ビザで再入国を希望する場合は、(1)上陸拒否期間を経過した後にビザを申請するのか、(2)上陸特別許可を求めて上陸拒否期間を経過する前に申請するのか、検討しなければなりません。
家族や親しい友人への連絡
不法滞在が発覚した場合、必要に応じて家族や親しい友人に連絡して状況を説明しましょう。サポートや助言を求めることができますし、今後の計画を立てる際にも役立つことがあります。但し、結婚をするとき、親兄弟姉妹の方々に、きちんと相手を紹介をしていない段階でいきなり相手のオーバーステイの話をすると、親や兄弟姉妹の方々は拒否反応を示すことがあることには留意しましょう。ステップバイステップが大切です。
在留特別許可の申請・申立
事情がある場合は、結婚のうえ、配偶者ビザの在留特別許可を申請(申立・願出)することができます。もし、この許可を受けた場合には、日本での滞在が認められることになります。従来の一般的な許可率は、時期や地方局にもよりますが、例えば、違反者全体では4%程度です。
そして、うっかり(過失で)オーバーステイを短期間してしまった軽い違反者を含めて、手続きの最終審査段階まで残った方のうち、概ね、2人に1人の50%程度です。数字が異なるのは、見込みがない案件を事実上、落として(帰国させて)行くためです。
採用の難しい会社に就活する場合の試験のようなもので、エントリー段階から絞り込んで、最終審査段階に到達するイメージです。これは不法滞在でも普通に許可するなら、法律は要らなくなるし、誰も守らなくるために、法律の実効性を確保するうえで、やむを得ないというのが、制度上の設計になっています。
したがいまして、「エントリー」で失敗した場合には、先に進むこともありませんので、十分に注意が必要です。
まとめ
状況を把握し、適切な対策を講じることがオーバーステイになった際の最良の対処法です。
オーバーステイ状態での結婚に関する制度や手続きは複雑であり、適切な対策を講じるためには、相当の知識と経験が必要です。当事者で行政手続である渉外戸籍(国際結婚)の手続きと、出入国在留管理局の配偶者ビザの基本知識と、応用知識である退去強制手続き、さらに犯罪者を扱う刑事手続、実務上の運用と最新の情報その他を横断的に十分に理解し、それから自分の状況に応じた対策を立てましょう。
誰しも、仕事が忙しかったりして、後手に回ってしまいがちです。しかし、通常とは違う「緊急事態」だとみて頂き、早期対応を心がけることと、迷わずアクションを起こしましょう。
オーバーステイの長さとペナルティの関係を理解する
オーバーステイになったらどうやって結婚する?その一環として、「オーバーステイとペナルティの関係を理解する」ことが重要です。以下に、オーバーステイとそれに伴うペナルティについてオーバーステイの期間の観点から説明します。
オーバーステイのペナルティとは?罰則や罪名はどうなるかなどを解説
オーバーステイの期間が短い場合
オーバーステイは1日でも不法滞在であって犯罪です。不法残留罪の成立時点は、在留期間が満了する日の翌日の午前0時です。但し、オーバーステイの期間が短く、事情がある場合、出国命令手続きや退去強制手続きと在留特別許可なしで結婚ビザを取得できる場合があります。しかし、ケースバイケースで審査されるため、必ず許可が下りるわけではありません。
オーバーステイの期間が中長期の場合
オーバーステイの期間が長い場合、たとえ結婚しても、出国命令手続きや退去強制手続きなしで済ますことはできません。理由は在留特別許可も退去強制手続きと合わせて行うものだからです。このため、ペナルティが重くなる可能性があります。例えば、逮捕された場合、懲役刑を言い渡される場合があります。また、再入国を希望する場合でも、上陸拒否期間が長くなることがあります。
以上のように、オーバーステイの期間とペナルティの関係を理解することで、適切な対策を講じることが可能となります。オーバーステイになった場合は、速やかに状況を改善しましょう。
在留特別許可を申請・申立するための準備と手続き
オーバーステイであることに気づいたらどうするか。その一つの選択肢として、在留特別許可を申請・申立するための準備と手続きがあります。以下に、結婚が理由の在留特別許可の申請に関する手続きと注意点について説明します。
在留特別許可の確率を確認する
まず、自分の状況が在留特別許可を申請・申立するための要件、及び、申請・申立後に許可されるかのどの程度の見込みがあるか確認しましょう。在留特別許可は、一定の条件を満たしたオーバーステイ者が在留資格を新規に得るための制度です。一般的には、配偶者や家族がいる場合や、過去に中長期在留資格を持っていた場合などが、審査の最初の「入り口の条件」となります。
立証の準備
結婚して在留特別許可を申請・申立しても、許可されなければ、意味はありません。この場合の審査官は裁判官のような立場で受け身になります。また、違反者全体のうち、在留特別許可はわずか4%程度です。このため、しっかりと立証の準備をしましょう。また、どのように準備しても4%は100%にはならない、書類を出せば許可されるものではないことを理解することが大切です。
たとえば、在留特別許可の申請には、(「申請」制度が始まった後は)申請書やパスポート、写真、収入証明書、家族関係や就労関係の記録を証明する書類などが必要です。また、結婚している場合は、結婚証明書や戸籍全部事項証明書、(もし以前のものを持っていた場合には)配偶者の在留カードと、そのコピーなども準備しましょう。違反内容によっては、他の犯罪歴がないことの証明書を用いる場合もあります。
申請手続き
結婚後、立証資料が揃い、かつ、審査を受ける前提となる状況が整ったら、管轄の出入国在留管理局に配偶者ビザのための在留特別許可の申請を行います。なお、従来は「申請」とは言わずに申し立てや、願出などと呼称してきましたので、注意しましょう。「申請」という名称になった後でも、退去強制手続きでの「容疑者」の扱いは併存しますので、本人が直接取り調べを受ける必要があります。また、警察とは別途に身柄を収容する場合もあります。
このため、一般的な行政機関への「申請」というよりは、出入国在留管理局の中に、外国人裁判所のような要素が渾然一体となった行政組織への特別の申し立てであるというのが実態です。
在留特別許可の審査結果待ち
在留特別許可の申請が受付されると、審査をします。しかし、名称が「申請」になっても、これまでの審査の実態が大きく変更されるとは考えにくいところです。なぜなら正規在留申請の配偶者ビザでも普通に不許可になるところ、正規在留申請より非正規在留申請の許可率が高くなることは考えられないためです。したがって、実際の審査は退去強制手続きの最初の端緒時点から、もう実質的にスタートしていることに注意しましょう。
配偶者ビザの場合、正規在留申請の場合に許可できないものは、在留特別許可では、なおさら許可できないのが基本です。したがって、国際結婚での配偶者ビザの正規在留申請の場合の基本ルールを先にマスターしましょう。
審査完了時、出入国在留管理局から呼び出され。結果が告知されます。結果が出るまでの期間は、申請内容や審査状況によって異なります。
まとめと注意点
在留特別許可は、あくまで裁量的な措置であり、申請しても必ずしも認められるわけではありません。申請して不許可になった場合、退去強制を受ける可能性があります。
また、その段階では出国命令手続きに戻ることはもうできないことに注意しましょう。退去強制令書が発付されている段階では、日本人と結婚していても、出国命令を希望できない、二者択一のルールのためです。
そのため、在留特別許可の申請には十分な準備と慎重な対応が求められます。
オーバーステイと結婚の現実:直面する問題と対策
オーバーステイ状態で結婚を考える場合、さまざまな問題に直面することがあります。本記事では、オーバーステイと結婚の現実について、具体的な問題点や対処法を検討していきます。
適切な対策を講じることで、ビザの取得や家族との将来を守ることが可能です。オーバーステイの状況下で結婚を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
オーバーステイ状況下での結婚手続きの現実
オーバーステイ状況下での結婚手続きは、通常の手続きと比較して困難な場面が多く存在します。
以下では、オーバーステイ中に結婚を考えるカップルが直面する現実的な問題や、それに対処するために知っておくべきポイントについて解説します。適切な対策と準備を行い、結婚に至る道のりをスムーズに進めるための情報をお伝えします。
国際結婚の戸籍手続の現実と婚姻要件具備証明書
オーバーステイでは結婚手続きの早さで、人生が変わってしまうこともあります。
しかし、オーバーステイでは婚姻要件具備証明書がない、または、得ている時間がない場合もあるのではないでしょうか。結婚できない現実は存在します。
婚姻要件具備証明書のない場合、市区町村は、法務局(東京地区の場合、東京法務局)への受理照会の扱いにすることもあります。その場合、期間はバラバラですが、例えば概ね約1か月後に、法務局へ呼ばれ、申述書(夫婦ともに独身であり、婚姻について何らの問題もない等という内容)をまだ出していない場合、それにサインし、二人の馴れ初めから、現在に至るまでの状況を口頭にて説明し、問題なければ、その1週間後くらいに、受理されたとの知らせが市区町村から来る場合もあります。
法務局への受理照会の扱いにされた場合には、市区町村の役所からは、「受付証明書(預かり証明書とか、受理照会証明書とも言う。)」は頂いておくべきでしょう。なお、「受理」証明書は、婚姻成立時点でのものなので、まだその場面では発行されません。もっとも、婚姻要件具備証明書がないときでも即日受理される例はあり、その場合には、請求により婚姻届「受理」証明書が発行されます。戸籍反映までタイムラグがある場合、入管で使うことがあるので、入手しておきましょう。
他方、婚姻要件具備証明書があり、かつ、国籍を証する文書(この場面では、旅券は国籍証明書の役割に過ぎない。)があるのに、即時受理しない場合もあります。
そのような扱いは不当である場合が多いので、即時受理しないときは、行政機関への陳情を実施したり、監督官庁たる法務局戸籍課や法務省民事局へ、適切な方法でコンタクトを取り、即時受理可能との回答を得たり、行政内部で「調整」頂き、その旨、窓口で対応している職員に伝え、人道的配慮等により即時受理を誘導する等の対応を採ることで、即時受理されることもあります。
他方、ほとんど書類がない場合は、なければないほど、結婚が成立する確度は下がるのが現実です。
したがって、相手方と結婚が現実的になった時点で、早速、現地の親族等に頼み、書類は手配しておくことが、オーバーステイであってもなくとも、国際結婚の鉄則だといえます。
幸いにして結婚できた場合は、戸籍に載ります。但し、戸籍は、基本的には、外国人は対象ではなく、日本人が対象ですので、日本人側の戸籍の身分事項欄に記載されることになります。
国際結婚の住民票の現実
住民票はオーバーステイでは登録できません。在留特別許可されれば住民票に登録できます。
住民票も、元々は外国人は対象ではなく、日本人が対象でした。外国人登録制度は、住民票制度に吸収されて現在の仕組みになりました。住民票はビザでは非常に重要で、事実と異なる登録はビザの不許可につながることもあります。
オーバーステイで国際結婚し、出入国在留管理局に配偶者ビザを申請するに際しては、通常、日本人側の住民票は現実に住んでいる場所と一致させておかねばなりません。もし、特段の事情により、住民票上の住所と実際に住んでいる場所との齟齬がある場合、出入国在留管理局への提出書類には、その双方の住所地を併記するとともに、理由や説明を添え書きする必要があります。
また、過去に遡って、住民票の住所の移転を登録する場合、あくまで、生活の本拠を移して、実際に移転した日にするのが本来です。というのは、このことは単に、住民票のコンプライアンスだけではなく、「配偶者ビザ」との関係で、同居等の期間等を証明する一資料にもなるからです。但し、住民登録実務の窓口ではそれが困難な場合もあります。
それはさておき、「同居」というのは、入管では非常に重要な概念で、これの有無、期間の長さ等の実態が黙示的な要件になって、配偶者ビザの許可という法律効果に結びつきます。
(旧)外国人登録の現実
外国人登録制度は住民登録に吸収されたので、もう関係ないように見えますが、以下に述べるようなことは、今後の様々な制度改正で「またある」可能性があるので、歴史的事実として解説しておきます。入管制度は頻繁に制度改正されますが、歴史を学ぶことで、未来を予測できるからです。
国際結婚する全ての夫婦に関係ある話ですので、最後までお読み頂くことをお奨め致します。
以前はオーバーステイで外国人登録できました。外国人登録証明書に、あなたは不法滞在者であるとして、「在留の資格なし」と書いたのです。
オーバーステイの事案では、市区町村の外国人登録課のほうが、「先に入管へ出頭して下さい。外国人登録はその後です。」などと、とても「親切な」指導をする場合すら(たまに)ありました。これは、市区町村の外国人登録課は、外国人登録の申請を受け付けた以上、少なくとも入管には通報することになっているために、極端な話、登録申請後、数日で入管職員が、自宅まで収容しに来て、自主出頭できなくなって、大騒ぎすることになってしまうような事態にならないようにと、市区町村の外国人登録課の職員が親切にも配慮してくれていたとも解釈可能です。
ちなみにですが、入管業界関係者の間では、入管職員も含めて、外国人登録は(あまり)重視していませんでした。ビザや在留資格とは「直接には」関係ありません。但し、入国警備官の中には、「入管に来るより先に外国人登録するように」と指示するケースもしばしばありました。入国警備官の実務上、当時、立件時に外国人登録済のほうが案件を処理しやすかったためだと推定できます。
つまり「先に入管」か「先に市区町村で外国人登録」か。両者の行政指導は矛盾しており、入管の指示どおりに「先に市区町村で外国人登録」を実践して、外国人登録ができるのを待っていたら入管が本人を収容するなど、混乱を招いていました。この点、知識ですが、当時から縦割り行政のために、市区町村の戸籍課の職員のほうは、外国人登録の意味もよく理解していない職員が存在しておりました。
そこで、現在どうなのかですが、市区町村職員や入管職員の実態はあまり変わっておりません。またここで述べたようなことは最近の若い入管職員や若い行政書士に申し上げても、ご存知ないレベルの話です。しかし、警鐘として、申し上げる必要があるのは、イミグレーションでは、またこういう問題が生じる可能性が常にあるということです。特にオーバーステイの結婚では行政機関は当事者の味方では一切無いのが現実です。
過去から現在まで、日本の戸籍法上、結婚するのに住民登録は、要りません。
また、パスポートも、(国籍を別途証明できるなら)不可欠では、ありません。
但し、現実的な問題として、国際結婚するには、相手の国の駐日大使館等の外国政府機関から、独身証明書ないし婚姻要件具備証明書を取得する必要があります。その場合に、国によっては、ビザがないのに本人の住民登録や在留カードを求める国が昔からありますので、注意しましょう。
<参考>
○市区町村の戸籍=婚姻届を出す係で、法務局の監督下。
○市区町村の(旧)外国人登録=住民票のようなもので、出入国在留管理局の監督下。
ある審査官との会話でわかる現実
:ある日の事情通Aさんと東京入管某部門某統括審査官(部長級)の話
(オーバーステイで結婚後に収容された後)
審査官「・・・何で収容されたの?」
Aさん「当事者は今まで外国人登録を申請して、カードができるのをずっと待っていたようです。」
審査官「うーん。普通の人じゃ、知らなくてもしょうがないかなぁ。」
Aさん「でも結局待っていたから収容されたんですよね。そういう方は、かなりおられますね。」
審査官「結婚するのに外国人登録が要ると思っている人もいますね。」
Aさん「あ、それすごい多いですよ。区役所の人も勘違いしてる場合もありますから。」
審査官「区役所の人は専門じゃないですからね。」
Aさん「短期間で持ち場が変わるからですね。」
※注:外国人登録は当時、オーバーステイしていると市区町村での登録に長い待機期間が必要でした。外国人登録制度は今はありません。但し、イミグレーションや市区町村の本質は全く変わっていないので、知っておかねばならない歴史的事実として記載しております。
オーバーステイ時の駆け込み結婚:リスクと対処法
オーバーステイ時の駆け込み結婚とは、オーバーステイ者が駆け込みで結婚を通じて合法的な在留資格である配偶者ビザを取得しようとするケースをいいます。しかし、この方法には多くのリスクと課題が伴います。
まず、駆け込み結婚は偽装結婚と疑われやすく、在留資格の許可が困難になることがあります。しかしながら、現在進行形でオーバーステイしている以上、不法滞在は継続犯ですので、手続きをしないまま待機しているような時間は、通常はないことに注意しましょう。具体的にはこうです。
たとえば、(1)出頭前であれば今日か明日に摘発されても全くおかしくありません。
他方、(2)出頭直後の場合、入管は帰国(違反初回の場合は出国命令)と在留希望と選択する際に考える際の時間的猶予を、通常はほとんど与えません。理由は出国命令制度が速やかに出国することが要件だからです。したがって在留希望したが婚姻成立しなければ、そのまま退去強制となって、初回で5年拒否になります。このため、帰国希望か在留希望かを事前によく考えておきましょう。
そして、(3)仮放免中(新法で「監理措置」中)の場合で退去強制令書が発付されていない場合は、いつ収容ないし退去強制令書が発付されても、不思議ではありません。
最後に、(4)仮放免中(新法で「監理措置」中)の場合で退去強制令書が発付されている場合は、いつ収容ないし退去強制令書が執行されても、奇異なことではありません。退去強制令書の執行とは強制送還するという意味です。これらのため、仮放免中に初めて知り合った案件では、お相手の手続きの進捗状況を調べておきましょう。
以上のことは、新法で「監理措置」制度が導入されても、大幅に変わるとは予想されません。
したがって、真剣な結婚意思を証明するためにも、関係する証明書類や生活の様子を示す写真などを用意しておくことが望ましいです。
オーバーステイ者が駆け込み結婚後、合法的な配偶者ビザを得るためには、在留特別許可の申請ないし申し立てが必要です。この申請には、結婚の経緯やカップルの生活状況を詳細に説明する必要があります。また、書類審査や入管保有情報の確認、面接、その他の調査が行われることが一般的ですので、予め想定しておきましょう。
以上のとおり、オーバーステイ時の駆け込み結婚では、リスクを理解し、十分な準備と対策が必要です。
出国命令とは?オーバーステイで結婚して出国後、再入国できるか
出国命令とは、
入管法違反者のうち,一定の要件を満たす不法残留者について,収容をしないまま簡易な手続により出国させる制度
※引用:法務省出入国在留管理庁
です。その要件は、次のとおりです。
(1) 速やかに日本から出国する意思をもって自ら出入国在留管理官署に出頭したこと
(2) 不法残留以外の退去強制事由に該当しないこと
(3) 窃盗罪等の一定の罪により懲役又は禁錮に処せられたものでないこと
(4) 過去に本邦から退去強制されたこと又は出国命令を受けて出国したことがないこと
(5) 速やかに日本から出国することが確実と見込まれること
このように、出国命令とは、不法残留者が自主的に国外へ出国するように求められる命令のことを指します。出国命令を受けた場合、1年間の上陸拒否期間が課せられます。そのため、オーバーステイで結婚して再入国を希望する場合、上陸拒否期間を確認する必要があります。
オーバーステイで結婚した後、再入国が可能かどうかは、個々の状況によって異なります。出国命令を受けた場合、通常1年間の上陸拒否期間が課せられますが、これが経過すれば再入国が認められることがあります。ただし、出国時の入管法違反の経緯や結婚状況などが詳細に調査され、入国審査が厳格に行われるため、必ず再入国が許可されるわけではありません。
したがって、出国命令後に再入国を希望する場合、出国前の段階から、入国審査に備えることが重要です。
なぜなら相手が日本にいないと作れない書類や、用意がしにくくなる資料があるからです。このため、出国前から、結婚ビザや配偶者ビザの申請に必要な書類や証明書を用意しておき、併せて、真剣な結婚意思も証明できるように心掛けましょう。また、出国命令を受けた経緯や改善された現在の状況を説明することも、再入国審査において有益となります。
オーバーステイで結婚後、再入国を成功させるためには、イミグレーションについての広汎な知識と深い理解と経験が必要です。適切な手続きや対策を行うことで、オーバーステイで結婚した後の再入国をスムーズに進めることができます。
オーバーステイでの結婚後の生活:問題回避のためのアドバイス
オーバーステイでも結婚自体はできるのが一般的です。しかし、結婚=ビザではありませんし、審査には長期間かかることがあります。
このため、結婚により、新たな生活が始まるものの、問題が発生することもあります。オーバーステイでの結婚後の生活を円滑に進めるため、問題回避のためのアドバイスをいくつかご紹介します。
まず、(自分自身がオーバーステイの場合)オーバーステイ者としての過去の経歴を隠さず、正直にパートナーに伝えることが重要です。隠し事をすると、信頼関係が崩れる原因となることがあります。
逆に打ち明けられた側は、オーバーステイはなかなか言いにくいことで、信頼関係ができるまでは、最初は言わないほうがむしろごく普通です。勇気を持って打ち明けられた場合には、信頼関係があるという意味であり、逆に関係が深まることもよくあります。このようして、お互いに事情を理解しあうことで、共に問題を解決するために協働してゆくこととなります。
なお、後日、入管で審査を受けるとき、「いつオーバーステイを打ち明けられたか」を聞く質問もありますので、覚えておきましょう。
次に、適切な在留資格を取得することが大切です。オーバーステイ後の結婚でも、配偶者ビザの申請と許可が可能である場合があります。大別して、(1)帰国希望か(2)在留希望か、に分かれます。適切な手続きを行い、法的な問題を回避しましょう。当事者が(2)在留希望であっても、家族に警察官がいて、立場上、家族に迷惑をかけないよう、(1)帰国希望にしかならないケースもあります。
また、オーバーステイで結婚した場合でも、税金や社会保険の支払いを適切に行うことが必要です。
そして、(1)帰国希望の場合は、しばらく、離れ離れになるのが通例です。その間、お互いにビデオ通話とアプリで励まし合って、また日本に来れるように取り組みましょう。
(2)在留希望の場合、審査は早くて数か月前後、遅いと数年から10年単位で待機することになります。私たちが現場で生の夫婦を拝見した中で申し上げると、人は待機期間が概ね1年を超すと、ストレスが著しくなるようです。
そこで、長期間入管の審査を待つ間、ストレスを解消し、気分を紛らわせる方法をいくつかご紹介します。
以下では、夫婦で一緒にできることと、日本人側が仕事に行っているときに、外国人本人が一人でできることに分けてご紹介します。
夫婦で一緒にできること:
○自宅で映画やドラマを視聴し、共通の話題を楽しむ。
○料理やお菓子作りに挑戦する。
○ゲームなどで楽しむ。
○散歩や軽い運動を通じて、近所の自然や風景を楽しむ。
○ペットを飼ってお互いに育てる。
○趣味を共有し、お互いに新しいことを教え合う。
○お互いの言語を学び、コミュニケーション能力を向上させる。
○家庭内に緑の植物を置き、栽培する。
○仮放免後の場合、都内や同じ県内に行動範囲が制限されますが、都内の場合には、小笠原諸島なども含むので、行ける場所を見つけて一緒に旅行する。
○日本人側の家族、親族と積極的に交流する。
○夫婦でマイホームを持つ。結婚相手が仮放免中でも、住宅ローンを組んでマイホームを持つことは可能であり、実例あります。
○最後は「心構え」です。難民申請中の場合には、退去強制令書前であっても、極端な年数がかかるのが普通です。最初から、数年、5年、10年以上とかかるかもしれないと想定しておき、心構えと人生の計画を持っておきましょう。
外国人本人が一人でできること:
○オンラインコースや教材を使って、語学や新しいスキルを学ぶ。
○読書やオーディオブックを楽しみ、知識や見識を広げる。
○ヨガなどリラックスできる活動を行い、ストレスを緩和する。
○スポーツクラブや自宅でエクササイズやストレッチを行い、健康維持に努める。
○SNSに投稿を書いて、自分の感情や考えを整理する。但しSNSは入管が見る場合もあります。
○SNSアプリやビデオ通話を通じて、家族・友人とコミュニケーションを取る。
○絵画など、創造性を発揮できる趣味に挑戦する。
○くもん式や、自治体主催の日本語教室に参加する。
○高齢者施設でご高齢の方々との話し相手になるなどのボランティアがあります。本人にどの程度、責任(=非難可能性)があるのかという案件の内容にもよりますが、ただ単に権利を主張するだけでは心証は決してよくありません。様々なボランティアに参加して地域に貢献しましょう。
遠くに旅行することはできない状況でも、上記のような方法でストレスを緩和し、気分転換を図ることができます。夫婦で協力し合い、助け合いましょう。
以上、このようにして家族や地域社会との関わりを大切にし、周囲の人々との信頼関係を築くことも大切です。良好な人間関係を築くことで、必要なときに、入管の審査のうえでも助けになる立証や証拠資料を作ることができる場合があります。
オーバーステイ中の結婚:関連費用と予算の考慮点
オーバーステイ中の結婚後、新たなビザが発行されるまでの期間は、就労は不法就労になるので、できません。したがって、その間の生活費や家賃などを考慮する必要があります。
また、万が一の事態に備えて、緊急費用を用意しておくことも重要です。例えば、配偶者ビザが拒否されて収容された場合の仮放免ないし監理措置の保証金(300万円以内)や、強制退去となった場合のチケットの費用などが考えられます。航空券は高額ですので、大人二人での往復の費用をみておきましょう。
最後になりますが、出入国在留管理局を専門とする移民コンサルタントのサポート費用は、国や地域、専門家の経験や専門性、ケースの複雑さによって大きく異なります。また、オーバーステイ時の結婚に関するサポート内容によっても費用は変わります。
国際的には、合法的なイミグレーションコンサルタントや行政書士のサポート費用は、紙を1枚代書しただけでの数百ドルから、フルサポートする場合の数千ドル~1万ドル以上の範囲で変動します。複雑なケースや、サポート期間が長期化する案件や、特別な専門知識を要する場合には、さらに費用がかかることもあります。
他方、非合法のイミグレーション・ブローカーの場合には、私たちが、入管の審査の過程で、認識したものでは、2~3万ドル程度が上限です。但し、非合法のイミグレーション・ブローカーは日本に入れればあとは何でもいいという方式が一般的で、オーバーステイの国際結婚で利用するようなものではないのは勿論です。ただ、親族から借金をして、そうしたものを利用して、最初に日本に入国している場合もあるので、知識として知っておく必要があります。入管の審査でもその入国の経緯や支払い金額を聞かれる場合が多いからです。
この点、技能実習生も、来日前に、たとえばベトナムの場合ですと、概ね70万円程度の費用を、母国の送出機関又は仲介者に、支払って来日しているのが普通だと法務省が発表しています。この場合は合法的な費用です。
他方、逆に日本人がアメリカに留学する場合はというと、学費だけで年間400~500万円とされています。アメリカビザの専門家の報酬も、オーバーステイではない正規滞在のH-1BやL-1やE-2などの就労ビザで、諸費用別で、40~80万円程度が提示されており、オーバーステイの場合、アメリカでは「Deportation Defense」(強制送還防衛)という業務があるのですが、30万~200万円程度(防衛戦略の複雑度による)とわかります。
コストが高くなるのは、サポート期間の長さとサポート量、そして人件費が主な理由です。
このように、イミグレーション関係ではまとまった費用がかかるのが普通ですので、逆に安すぎる場合にはおかしいですから、注意しましょう。
具体的には、オーバーステイ時の結婚に関するイミグレーションコンサルタントや行政書士のサポートを利用する際には、事前に相談や見積もりを行い、実態が「ただの代書だけ」なのか、それとも様々なコンサルティングと提案業務を含むのか、費用とサービス内容を確認することが重要です。「代書だけ」の場合には、経験が要らないため、「全く無知識」でもできますが、それはコンサルタントではありません。最適なサポートを選択することを検討してください。
オーバーステイ中の結婚においては、上記のようなさまざまな費用と予算の考慮点があります。事前に十分な計画と準備を行うことで、スムーズな結婚生活への移行が可能となります。
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