国際結婚手続きとは、異なる国籍のカップルが結婚を正式に認められるために必要な一連の手続きのことです。それには、書類の準備や申請、各国の法律や規則に従った手続きが含まれます。
国際結婚を考えている方にとって、手続き期間や必要書類、そして苗字や国籍の変更や費用など、多くの疑問が浮かぶのではないでしょうか。ところが、国際結婚している本人かプロか、いずれかの解説しかなかったと思います。そこで、実際に外国と日本で国際結婚している本人でもあり、なおかつ、行政書士でもある私が、全ての経験とノウハウを公開して全力で正確に解説します。
この記事では、(1)「先に日本で結婚」と(2)「先に外国で結婚」の2つの場合を比較しつつ、国際結婚に関する手続きや注意点を分かりやすく解説し、スムーズな準備をサポートします。これから幸せな国際結婚を迎えるために、ぜひご活用頂ければと思います。
- 国際結婚手続きの必要書類とその入手方法
- 国際結婚手続きに時間はどのくらいかかる?その理由
- ステップバイステップ:国際結婚手続きの正しい順序と流れとは?
- 国際結婚手続きにおいて気を付けるべきこと
- 国際結婚手続きで苗字はどうする?
- 外国人と結婚すると国籍はどうなる?子どもの国籍は?
- 国際結婚手続きにおけるビザ手続きの詳細
- 国際結婚にかかる費用とその内訳は?
- まとめ
- プロに依頼したい方:20,000件以上の相談実績がある弊所がサポート
国際結婚手続きの必要書類とその入手方法
まず、国際結婚手続きに必要な書類やその入手方法を詳しく解説します。異なる国籍の方が結婚する際には、さまざまな手続きや書類が必要となりますが、適切な準備を行うことで手続きをスムーズに進めることができます。必要書類の種類や入手方法、注意点について理解し、国際結婚に向けての準備を進めましょう。
具体的には、(1)日本で先に婚姻する場合は、
- 婚姻要件具備証明書
- 婚姻要件具備証明書がないときの代わりの書類(例: 独身証明書、出生証明書、申述書など)
- 翻訳文
- 婚姻届書
- パスポートなどの国籍証明書
- 本籍地以外に出すときの戸籍全部事項証明書
- 免許証・公的医療保険証や在留カード(持っている場合)
- ハンコ(押印義務は廃止されましたが、あると便利)
- その他
です。但し、これでは足りない場合や、(2)外国で先に結婚する場合もありますので、様々な注意事項を以下、解説致します。最後までご覧になることがオススメです。
婚姻要件具備証明書って何?種類がある?独身証明書との違いは?
婚姻要件具備証明書は、結婚をするために必要な法的条件を満たしていることを証明する書類です。国際結婚において、(1)日本で先に結婚する場合と、(2)外国で先に結婚する場合で異なる「婚姻要件具備証明書」が必要になります。国際結婚手続きでは、両者をきちんと分けて押さえることが大切です。
日本で先に結婚する場合の外国人側の婚姻要件具備証明書など
日本で先に結婚する場合、原則として、外国人側は自国の駐日領事館や大使館、あるいは、本国の政府機関から婚姻要件具備証明書などを取得する必要があります。この書類は、その国の法律に基づいて結婚が許される条件を満たしていることを証明するものです。つまり、
婚姻要件具備証明書とは,その者の本国の法律が定める婚姻の成立要件を充足していることを証明するもので,各国の公的機関で発行されます。
※引用: 法務省東京法務局
婚姻要件具備証明書は、国際結婚手続きで使う独身証明書の一種だと表現できます。つまり、婚姻要件具備証明書とは、独身証明書の独身の証明に加え、その国の他の婚姻の要件も備えていることを証明したもののことです。
独身証明書の類とその取得方法は国によって異なるため、全世界で196か国分の種類があります。また同じ国の中でも、地域やエリアや時期で異なるので、数百種類以上あると言えます。
このため、詳細は外国人側が、自国の各国の政府機関や領事館や大使館に確認が要ります。具体例を申し上げますと、
○ベトナム
:基本的には駐日ベトナム大使館・総領事館発行の婚姻要件具備証明書を使います。前提として人民委員会の独身証明書を本国から取得します。他にも様々な書類が要るのが通例なので、早めに取りかかりましょう。
○フィリピン
:フィリピンも基本的には、駐日フィリピン大使館・総領事館発行の婚姻要件具備証明書を使います。但し、常に必ず必要な書類ではありません。一般に前提として、PSA発行の独身証明書を本国から取得します。
○タイ
:タイは現地政府発行の独身証明書をそのまま用いる場合が多いです。必ずしも駐日大使館・総領事館を使う必要のない国です。
○中国
:中国は発行する書類が変遷を重ねてきましたが、現在は基本的には駐日大使館・総領事館の独身証明書を使います。但し、これも必須ではなく、本国の公証処発行の独身証明書で足りる場合もあります。
外国で先に結婚する場合の日本人側の婚姻要件具備証明書
国際結婚手続きは、外国で先に結婚する場合、日本人側は日本の法務局又は在外公館から婚姻要件具備証明書を取得することになるのが一般的です。例えば、
法務局が発行する婚姻要件具備証明書は、日本人が外国の方式で婚姻する場合に、戸籍謄本等により日本法上婚姻障害がないことの要件を確認の上、申請者である日本人が日本の法律上婚姻の要件を備えていることを証明するものです。
※引用: 法務省大阪法務局
このように、この書類は、日本の法律に基づいて結婚が許される条件を満たしていることを証明するものです。本籍地の市区町村役場から戸籍全部事項証明書を取得したうえで、その記載内容を元に発行します。
婚姻要件具備証明書はどこで入手?
以上のとおり、婚姻要件具備証明書は、国際結婚手続きの際に必要な法的条件を満たしていることを証明する書類で、(1)先に日本で結婚する場合と(2)外国で結婚する場合で、入手する人と、入手方法が異なります。
(1) 先に日本で結婚する場合の「外国人側の」婚姻要件具備証明書
外国人が日本で結婚する場合、原則として、「外国人の婚姻要件具備証明書」などを取得する必要があります。入手の場所は、外国政府の駐日領事館や大使館、あるいは、本国の政府機関になります。
(2) 先に外国で結婚する場合の「日本人側の」婚姻要件具備証明書
日本人が外国で結婚する場合、日本の法務局か在外公館(=外国にある日本の大使館・総領事館)から「日本人の婚姻要件具備証明書」を取得します。
例えば、日本人とベトナム人がベトナムで先に結婚する場合、法務局のほか、在ベトナム日本国大使館では、日本人向けの、
婚姻要件具備証明書(独身証明)
申請人が独身であり、日本国の法令上婚姻可能な年齢に達していることを英文で証明するもの
※引用: 在ベトナム日本国大使館
を発行しています。
このように、外国での手続きに合わせて、証明書を英語やその国の言語に翻訳したり、法務局発行のものはアポスティーユや公印確認を付ける場合もあります。日本の法務局と日本政府の在外公館の婚姻要件具備証明書のいずれがよいかは、外国で婚姻を審査する現地の外国の役所の担当官の考え方に左右されます。
国際結婚手続きで婚姻要件具備証明書がない場合は?
上記で述べた、(2) 先に外国で結婚する場合の日本人側の婚姻要件具備証明書が発行されないというのは、普通はありません。ですので、(1) 先に日本で結婚する場合の外国人側の婚姻要件具備証明書に限り、このトピックが問題になります。
外国人側の婚姻要件具備証明書が発行されない場合、先に日本で結婚する際には、代替書類が必要です。以下は一般的な対処法ですが、個別の案件と市区町村の担当官や管轄法務局の担当官ごとに異なりうることに注意が必要です。
まず、外国人側の婚姻要件具備証明書の代わりになるような、独身証明書、出生証明書を用意します。旅券がない場合には国籍証明書も通常は必要です。
この点、独身証明書が「宣誓書」という書類である場合もありますが、そういう文書の表題である場合は、実際の戸籍実務ではごく一部であり、ポイントは「独身証明書」であることに注意しましょう。例えば、総務省の調査では、
市区町村が、届出人の独身性を判断することを目的として添付を求める書類を、独身証明書として整理している。
※引用: 総務省
とされています。
そして、外国人側の申述書を作成します。申述書には、自分が婚姻要件を満たしていることを明記し、署名します。この申述書には公証は通常、必要ありません。また、婚姻届で用いる申述書は所定の書式の決まりはありません。行政実務の現場では、結局のところ、各地の市区町村でたまたま担当した職員によってリクエストが異なるので、それに応じて作成します。
このような手続きを経て、市区町村側で認めた場合には、婚姻要件具備証明書が発行されない国の場合でも、日本で結婚することができます。ただし、受理審査や法務局への受理照会などで手続きが時間がかかる場合があるため、十分な時間と準備が必要です。
【参考知識】独身証明書とは?
独身証明書とは、国籍にもよりますが、未婚公証書、未再婚公証書、離婚証明書、無婚姻登記記録証明書、などの文書のタイトルや表題を問わず、中身が独身の証明である公的書類のことです。国や地域や時期などで千差万別であり、出生証明書の中に独身証明の旨が入っていて、それが独身証明書だという国もあります。
【参考知識】申述書とは?
申述書とは、国際結婚手続きで、婚姻要件具備証明書がないときに、婚姻要件を充足している旨を外国人側が申述するために用いる書類を意味します。作成名義人は日本人側ではなく、外国人側です。「宣誓書」などの独身証明書とは別の書類です。
【参考知識】書類はできるだけ返してもらいましょう。
国際結婚手続きで使う様々な書類は、市区町村では、何も言わないと、そのまま返してくれないことがあります。しかし、後で外国政府側に婚姻届するときや、出入国在留管理局での配偶者ビザ申請に使う書類もあります。婚姻要件具備証明書は返してくれませんが、他の書類は応相談です。以上から、可能な限り返してもらいましょう。
具体的には、日本の役所の場合には、「原本照合」と言って、原本を窓口に持参し、外国政府など向けでも使うので、コピーで済ませて欲しいと言うと、役所の人が役所のコピー機でコピーし、原本はその場で返却してくれることがあります。自分から言わないとやってくれませんし、教えてもくれません。但し、必須ないし重要書類は返してくれない場合が多いです(例、婚姻要件具備証明書や、婚姻要件具備証明書が無いときの出生証明書等で再発行可能なもの。)。
他方、外国の在日本大使館等は、原本類は返却してくれない場合が多いです。
翻訳文の注意点
国際結婚手続きでは、戸籍法施行規則により、
届書に添付する書類その他市町村長に提出する書類で外国語によつて作成されたものについては、翻訳者を明らかにした訳文を添付しなければならない。
※引用: e-GOV法令検索
とされています。
したがって、(1)先に日本で結婚する場合は、日本語以外の言語で記載された書類の日本語への翻訳が必要です。(2)先に外国で結婚する場合、大半の国では日本語からその国の認める言語への翻訳が必要です。いずれの場合も、翻訳の誤りや食い違いがあると、手続きが遅れる可能性があります。
また、日本の市区町村の戸籍実務では、翻訳文中の氏名のカタカナ表現と、婚姻届書に記載する氏名のカタカナ表現が食い違うと、翻訳文を訂正しなければならない場合がありますので、注意しましょう。
婚姻届書
(1)先に日本で結婚する場合は、日本の婚姻届書が必要です。
日本の戸籍では、漢字圏の国以外のパートナーの場合は、外国人側の氏名はカタカナになります。婚姻届書の外国人側配偶者の欄に記載するカタカナ氏名は、そっくりそのまま、日本人側の戸籍に記載される非常に重要なものです。永遠の愛で永遠に使うものですので、お相手と相談し、どういうカタカナにするのか、決めておきましょう。
【参考知識】婚姻届書のポイント。国際結婚手続きで証人は必ず必要?
婚姻届書の用紙は市区町村等の戸籍課等にあります。先に日本で結婚する場合に限って、成人の証人二人の署名が必要です。先に外国で結婚したときは、証人はいりません。理由は外国でもう結婚が成立完了しているためです。
婚姻届書の「(5)同居を始めたとき」は実際に同居開始した月を記入するものです。書き方が不明な部分は空白のまま区役所に持参すれば、窓口で記入指導されます。外国人の場合には、元々、ハンコは不要です。なお、日本人も押印義務は廃止されました。
【参考知識】外国で先に結婚した場合に、日本に出す婚姻届は夫婦二人の署名は必要?
既に外国で婚姻が成立した場合の報告的婚姻届については、
結婚相手の署名と証人の記載は不要
※引用: 東京都大田区
です。このように、相手方当事者の署名も、証人二人の署名も、要りません。届出する方の署名で足ります。もう結婚が成立しているためです。
【参考知識】成人の証人二人は、誰がいい?配偶者ビザを申請する場合は?
国際結婚手続きは配偶者ビザ申請を予定していることが多いので、理想的には、肉親、とりわけ、ご両親等がお奨めです。入管の審査上、心証に関わることがあります。また、この婚姻届は、通常、入管職員も重要資料として、扱うものです。肉親以外の人が証人になっている場合、その理由、たとえば、なぜ賛成しているはずの「親」でないのか、等の質問がされることもあります。
パスポートなどの国籍証明書
(1)先に日本で結婚する場合は、外国人側のパスポートなどの国籍証明書が要ります。顔写真ページの日本語への翻訳が必要です。ネットでは外国人側のパスポートが必須であるかのように解説した記事がありますが、行政実務、戸籍実務では、必須ではありませんので、注意しましょう。例えば、
国籍証明書の代わりに、パスポート原本(有効期限内のもの)があればそれでも結構です。
※引用: 東京都武蔵野市
とあるとおり、パスポートは核心部分ではありません。核心部分は「国籍証明書」なのです。
パスポートがない場合でも、代わりになる国籍証明書あれば結婚できます。また、外国人側は日本に来る必要はなく、書類だけでも結婚はできます。実際、本人が来日していないのにパスポートだけEMS等で送るような無理をする必要は、通例ありません。
他方、(2)先に外国で結婚する場合、大半の国では、日本人側のパスポートが要ります。
【参考知識】外国人側のパスポートは必ず必要?
国際結婚手続きでは、婚姻届の時に、外国人側の旅券(パスポート)の提示を要求されますが、代わりに、国籍公証書等の国籍を称する文書の提示等でも足ります。元来、旅券(パスポート)の提示を要求するのは、「国籍の確認」のためだからです。ちなみに、仮に本人確認できなければ、婚姻届記載住所に確認のハガキなどを郵送することがあります。
なお、旅券(パスポート)がないまま「在留特別許可」されることも可能です。在留カード制度以前は、旅券の無い外国人への在留資格の証印は、特別の「在留資格証明書」という文書へ付与されました。現在は在留カードで、在留資格の証明になるので、それを持って、駐日外国大使館領事部へ行き、旅券の発行等を申請することになります。但し、在留特別許可の審査実務では、大半の案件は、遅くとも審査中に、パスポートを手配することになります。
【参考知識】外国人側が出入国在留管理局に収容されていたら?
外国人側が収容され、かつ、国籍の証明書も無いときは、通常、そのような場面では入管で旅券(パスポート)を保管しているので、入管で旅券(パスポート)謄本交付の申出手続を本人に、施設内の申出書にて、提出して頂きます。それを婚姻届に添付致します。この「謄本」は、入管の公印がついた公文書で、国際結婚手続きの場面に限っては、パスポートの代わりになります。再発行困難なので、市区町村からは返して頂きましょう。なお実務上は、入管の理解を得ない限りは発行されません。
戸籍全部事項証明書・戸籍謄本
(1)先に日本で結婚する場合に、本籍地以外に出すときに限り、必要です。住民票がある市区町村かどうかは関係がありません。住民票がない場所でも、そこが本籍地の市区町村の場合には、戸籍全部事項証明書ないし戸籍謄本はいりません。
(2)他方、先に外国で結婚する場合、日本人側の戸籍全部事項証明書が要るかどうかは、外国の婚姻審査をする外国政府の担当官次第ですが、一般には日本人側の婚姻要件具備証明書が必要で、戸籍全部事項証明書は要りません。
その他:国際結婚手続きに在職証明書や住民票は必要?
日本の市区町村への婚姻届に在職証明書や住民票は不要です。但し、入管用の配偶者ビザの申請書類では使う場合があります。またこれとは別に国際結婚手続きの途中で外国政府側から、相手の婚姻要件具備証明書や独身証明書を取得する際に、在職証明書や住民票が必要な国もあります。
まとめ
国際結婚手続きは、(1)先に日本で結婚する場合の外国人側の「婚姻要件具備証明書」の話ばかり書いてあることが多いのではないでしょうか。しかし、実際は、婚姻要件具備証明書を発行しない国が多くあり、婚姻要件具備証明書が国際結婚手続きの全てというわけではないので注意しましょう。
これらの注意点を押さえておくことで、国際結婚手続きで提出する書類がスムーズに進み、手続きの遅れを防ぐことができます。事前に必要な書類や翻訳の要件などを確認し、適切な手続きを行いましょう。
国際結婚手続きに時間はどのくらいかかる?その理由
国際結婚手続きの期間は、各国の法律や手続き内容、必要書類の取得速度によって異なりますが、数か月から半年程度かかることが多いです。その理由は、(1)日本で先に結婚するか、(2)外国で先に結婚するかによっても異なりますが、以下の通りです。
国際結婚手続きで必要な書類の準備にかかる時間
結婚に必要な書類(戸籍全部事項証明書、婚姻要件具備証明書、独身証明書、出生証明書など)を集めるのに時間がかかることがあります。特に外国の書類は翻訳が必要で、公証が要件になる場合もあり、これらにも時間がかかります。
法律婚をするための法的手続きの準備にかかる時間
各国の法律に従って手続きを行うため、国によっては審査や公示、そして結婚許可証明書が必要です。これらの手続きは時間がかかることがあります。また、ムスリムの場合の法律婚には別途、宗教婚が必要になることが多いです。
結婚届の実際の提出と結婚の審査でかかる時間
国際結婚を先に外国で行う場合でも、先に日本で行う場合でも、いずれの場合でも必要書類を揃え、関連機関に提出する手続きが必要です。これにも時間がかかります。
また、国によっては、結婚に関する手続きが複雑であり、時間がかかることがあります。一般的な傾向として、結婚手続きに宗教的な関わり合いを持たせた国のほうが、厳格な要件を採用しています(例えば、牧師が関与するなど。)。
【参考知識】日本での国際結婚手続きで婚姻届は即日受理される?戸籍に載る時期は?
婚姻要件具備証明書を市区町村側で有効なものと即座に判断できた場合には、即日受理です。それ以外は千差万別で、数日から数か月以上審査している場合もあります。戸籍実務で「受理」とは婚姻を有効と認めたという意味です。「受理」の内部決裁後、実際に戸籍に載るタイミングは本籍地の場合で数日から1週間、本籍地が別の場合には書類を送るので、1~2週間のことが多いでしょう。
国際結婚後のビザ申請でかかる時間
外国籍の配偶者が日本に中長期滞在する場合、ビザ申請が必要です。ビザ申請にも、書類の準備にかかる時間と審査期間があり、申請内容や在留資格によっては数か月以上かかることがあります。例えば、代表的な手続である在留資格認定証明書交付申請では、
標準処理期間 1か月~3か月
※引用: 法務省出入国在留管理庁
とされています。統計上も、世間一般の配偶者ビザの認定証明書は審査期間1か月では出ておりません。加えて在外公館の査証申請の時間も加味しましょう。
国際結婚手続きの時間を短縮するためのポイント
これらの理由から、国際結婚手続きには時間がかかることが一般的です。事前に必要書類や手続きの流れを確認し、余裕を持って準備することが重要です。
国際結婚手続きやビザ申請にかかる時間を短縮するためには、正確な事前調査、適切な書類の準備、両国の法律の理解、できるだけ早い結婚届の提出、ビザ申請の早期対応が必要です。
これらの事項に注意して準備を進めることで、国際結婚手続きやビザ申請にかかる時間を短縮できる可能性があります。余裕を持ったスケジュールで進めることが、手続きをスムーズに行うために重要です。
それでは以下でさらなる具体的なポイントをみていきましょう。
ステップバイステップ:国際結婚手続きの正しい順序と流れとは?
国際結婚手続きというと、先に日本で結婚する場合しか書いていない記事が多くないでしょうか。(1)先に日本で結婚する場合と、(2)先に外国で結婚する場合、比較してみることが大切です。具体的に違いをみてみましょう。なお、ここでいう「外国」とは当事者いずれの国でもない第三国も含みますが、大半は相手の国です。
先に日本で結婚する場合の国際結婚手続きの順番
- 外国人側配偶者が外国人側の婚姻要件具備証明書などの書類を本国の機関(大使館等)から取得する。
↓ - 必要に応じて書類の翻訳や公証を行う。
↓ - 日本の市区町村役場で婚姻届を提出し、結婚が成立する。
:外国側に報告するとき、婚姻届受理証明書ではなく、婚姻後の戸籍全部事項証明書を使う場合もあります。
↓ - 可能な場合は外国人側の政府機関に婚姻を報告的に届出する。
:駐日外国大使館・総領事館に限らず、本国政府機関も届出先になりえますので、注意しましょう。
:なお、そもそも相手の国に報告的届出ができない国もよくありますが、一般的には問題はありません。
↓ - 外国人配偶者が日本で生活する場合、適切なビザ(例:配偶者ビザ)を申請する。
:ビザ申請の方法は、「在留資格変更許可申請」以外に「在留資格認定証明書」や、オーバーステイの場合の「在留特別許可」など複数ありますので、注意しましょう。
先に外国で結婚する場合の国際結婚手続きの順番
- 日本人側配偶者が日本人側の婚姻要件具備証明書(法務局又は日本の在外公館から取得)などの書類を用意する。
↓ - 日本人と外国人の双方が、結婚する外国の法律に従って婚姻手続きを行う。
↓ - 結婚が成立したら、その外国の政府機関から結婚証明書を取得する。
↓ - 必要に応じて書類の翻訳や公証を行う。
↓ - 日本の市区町村役場又は日本の在外公館で婚姻届を報告的に提出し、日本国内での結婚登録を行う。
↓ - 外国人配偶者が日本で生活する場合、適切なビザ(例:配偶者ビザ)を申請する。
(1)先に日本で結婚する場合と、(2)先に外国で結婚する場合、どちらがよい?
以上の比較で、どちらの方法を選択するかは、カップルの状況や希望に応じて異なります。
現在、日本人側が日本にいる場合、(1) 先に日本で結婚するほうが、簡便に済むことが多いです。理由は、一般に外国で先に婚姻する場合、書類だけで結婚できる国は例外的です。大半は、日本人側が現地に行かなければなりません。
ところが、(1) 先に日本で結婚する場合、外国人側は必ずしも来日している必要はありません。日本は書類だけで結婚できる国のため、外国人側が市区町村に出頭する必要は必ずしもありません。また、日本人側も必ずしも市区町村に行く必要はありません。代わりの人が国際結婚の手続きをすることすら可能なのです。
よく婚姻届は二人で出すとか、本人確認するとか、世間では誤解されていませんか。戸籍行政の実務ではそんなことはありません。
具体的には、
婚姻届は、届出人本人に限らず、使者が提出することもできます。
※引用: 広島市
一方、(2) 先に外国で結婚する場合は、両当事者共に、現地に滞在しているか、何らかの理由で日本で先に婚姻するための書類が揃わず、現地に日本人側が渡航して結婚するしかない場合が考えられます。
日本は書類だけで結婚できますが、書類の融通は効かない場合があります。
このように、お互いの国の法律や手続きを理解し、効率的でスムーズな手続きができる方法を選択しましょう。
国際結婚手続きにおいて気を付けるべきこと
注意すべきポイントをいくつか挙げます。
書類の準備と翻訳
国際結婚手続きには多くの書類が必要です。必要な書類を確認し、適切な翻訳や公証を行うことが重要です。
国際結婚手続きで使う書類は有効期間を把握し、期限内に手続きを完了させる
各種書類には有効期限があります。期限切れの書類を提出しないように注意しましょう。日本で発行される書類は通常、発行後3か月の有効性がありますが、外国で発行される書類は一般的には発行後6か月間有効とされています。但し、これは原則に過ぎません。例えば、日本発行の書類と外国外国発行の書類を区別せず、
証明書は3ヶ月以内のものをご提出ください。
※引用: 千葉県船橋市役所
としている市役所もあります。受付する担当官次第ですので、多少過ぎてもあきらめないでトライしてみることが大切です。
相手の国の法律と手続きを理解する
結婚する国の法律や手続きを理解し、適切な手続きを行うことが大切です。
ビザ申請
外国人配偶者が日本で生活する場合、配偶者ビザなどの妥当なビザを適宜に申請する必要があります。ビザ申請に関する手続きや条件を把握しましょう。
以上のポイントを押さえ、国際結婚手続きをスムーズに進めましょう。
国際結婚手続きで苗字はどうする?
国際結婚手続きにおいて苗字に関する取り決めは、結婚する国や夫婦の国籍によって異なります。以下に、日本人側と外国人側に分けて解説します。
日本人側の苗字(姓・氏)
国際結婚手続きでは、原則、夫婦別姓です。男性の場合は勿論、女性の場合でも自動的には相手の苗字(姓・氏)には変更されません。相手の苗字に変更するには、原則として、結婚届に伴い、戸籍の窓口でその旨を届出することになります。具体的には、
婚姻の日から6か月以内であれば、戸籍届出窓口に氏の変更の届出をするだけで、外国人配偶者の氏に変更することができます。
※引用: 法務省
※婚姻の日から6か月が過ぎている場合には、家庭裁判所の許可が必要です。
但し、外国で生活する場合に外国政府が日本人側にその国で公式に使える通称名として、外国人側の姓を与える場合があります。しかし、その場合でも日本人のパスポートでは、元の姓のままである場合があります。その場合、日本政府での公式の日本人側の苗字(姓・氏)と外国国内で使われている日本人側の苗字(姓・氏)が異なることになります。
外国人側の苗字(姓・氏)
国際結婚手続きでは、男性側が日本人でも、女性側が日本人でも、原則、夫婦別姓です。また、日本政府の法令で勝手に外国人側の姓を変える権限は日本政府にはありません。
しかし外国人側の外国の法令で外国人側のパスポートの姓が日本人側に変更された場合には、外国人側の(姓・氏)を変更されたことになります。たとえばいったん、旧姓で日本の戸籍に登録したものを、事後的に新姓、つまり日本人側の姓と同じに変更することもできます。
但し、日本で生活する場合には、日本では通称名制度があり、外国人側のパスポートの記載に関わらず、日本政府が外国人側に日本で公式に使える通称名として、日本人側配偶者の姓などの、ある程度、任意の氏名を住民票に登録できる場合があります。しかし、その場合でも外国人のパスポートと在留カード、住民票での本名では、元の姓のままである場合があります。
外国人と結婚すると国籍はどうなる?子どもの国籍は?
国際結婚手続きにおいて、外国人と結婚した場合の国籍や子どもの国籍については、夫婦の国籍と状況によって異なります。以下に、いくつかの一般的なケースについて解説します。
結婚した日本人の国籍
国籍法では、
第十一条 日本国民は、自己の志望によつて外国の国籍を取得したときは、日本の国籍を失う。
※引用: 法務省
とあります。したがって、国際結婚手続きをする際に自己の志望で外国国籍を得たときは、日本国籍が無くなることになります。
「日本人女性が外国人男性と結婚する場合にのみ」に、この法律が使われるわけではないので、注意しましょう。日本人男性であっても、自己の志望で外国国籍を得たときは、日本国籍が無くなります。
他方、国際結婚手続きで自動的(一方的)に相手の国籍が与えられる場合には、日本国籍は無くなりません。これは自己の志望とはいえないためです。
ただ、ネットの記事では、国際結婚手続きと国籍の話をみかけますが、戸籍実務では、国際結婚の全体の数からみたとき、ほとんどの国際結婚では、外国人と結婚しても、国籍への影響はありません。これが結論ですので、普通の方は、国際結婚手続きでの自分自身の国籍がどうなるは、関係のない話だということになります。
国際結婚で生まれる子どもの国籍の手続き
次に、生まれるハーフの子どもの国籍は両方の国の国籍法と、いずれの国で出生したかによって異なります。
子どもの国籍は、出生時に親のいずれかの国籍を取得しますが、必ず二重国籍になるわけではありません。たとえば、父母両系血統主義の国でも日本で生まれた場合には、その国の国籍を取得しないという国もあります。
※父母両系血統主義とは、
その国の国籍を有する父又は母の子として生まれた子に,その国の国籍を与える主義
※引用: 法務省
を言います。
一般に国際結婚では、子どもが複数の国籍を持つことがよくありますが、日本法では、原則、20歳までに一つの国籍を選択することが求められています。
また、子どもが外国での出生時に、外国国籍を取得した場合には、国籍留保をしないと、子どもは国籍喪失となります。このように、国際結婚の手続きを検討している場合は、各国の国籍法について事前に調べておくことが重要です。
国際結婚手続きにおけるビザ手続きの詳細
国際結婚手続きにおける配偶者ビザなどの在留資格の手続きは煩雑ですが重要です。
まず、外国に住む場合には、その外国の出入国在留管理局の申請が必要です。ある国における移民ビザは、どの国も「外国人」への人権という考え方が弱いので、特有の考え方があります。アメリカなどの先進国向けでは、外国の移民ビザ専門家に相談することが多いでしょう。先進国以外の開発途上国では、出入国在留管理局の職員に金品を提供することもあると聞きます。好ましいことではありませんが、どこの国も出入国在留管理局は特殊だという理解が必要です。
次に、日本に住む場合は日本の出入国在留管理局での申請が関わります。外国人配偶者は、日本人側配偶者と協力し、配偶者ビザについて、(1)「在留資格認定証明書交付申請」、(2)「在留資格変更許可申請」、(3)「在留期間更新許可申請」(既に配偶者ビザを持っている場合)、などのいずれかを行うことが多いでしょう。(4)オーバーステイの場合は制限が多くなりますが、「在留特別許可の申し立て」を検討することもできます。また、例えば、「在留資格変更許可申請」は、
いずれかの在留資格で在留している外国人の方が、在留目的とする活動を変更して別の在留資格に該当する活動を行おうとする場合に、新しい在留資格に変更するために行う申請です。
※引用: 法務省出入国在留管理庁
これらの手続きが完了し、許可されれば、外国人配偶者は日本で安定した生活を送ることができます。
手続きは適切な書類を用意し、順序立てて行うことでスムーズに進められます。新規のビザ手続きや、その後の在留期間更新など定期的に行う必要がある手続きについても、引き続き期限を確認し、遅れないよう注意してください。
国際結婚にかかる費用とその内訳は?
国際結婚手続きにかかる費用は、手続きの種類や必要書類、関連サービスによって異なります。以下に一般的な費用の内訳を示します。
- 書類取得費用: 婚姻要件具備証明書や戸籍全部事項証明書、出生証明書などの取得にかかる費用。
- 翻訳費用: 必要書類の翻訳にかかる費用。公認翻訳者による翻訳が必要な場合もあります。
- 領事館・大使館手数料: 書類の提出や認証手続きにかかる手数料。
- 移動費用: 書類取得や手続きのための移動費用、外国の役所への渡航費用など。
- 専門家への相談費用: 国際結婚やビザ申請に関するサポートを受ける場合の費用。
- ビザ申請費用: 配偶者ビザなどの申請費用。難易度や複雑度で異なります。
これらの費用は、国や地域、個々の状況によって異なるため、事前にリサーチや相談を行うことが重要です。また、効率的な手続きを行うための情報を収集して検討することもおすすめです。
まとめ
国際結婚手続き完全ガイドでは、手続き期間、必要書類、苗字、国籍、配偶者ビザ、費用などについて詳しく解説しました。国際結婚手続きは複雑で時間がかかることが多いですが、事前に適切な準備と情報収集を行うことで、スムーズに進めることができます。
必要書類については、日本側と外国側双方のものがあり、書類の有効期限や翻訳の注意点にも気を付ける必要があります。
苗字については、国際結婚手続きでは夫婦別姓が原則で、各々の配偶者がそのままの姓を名乗っているのは珍しくありません。国籍については、日本人と外国人が結婚した場合でも、国籍は一般的には自動的に変更されず、子どもの国籍も選択肢があります。
費用については、手続きにかかる費用や夫婦生活にかかる費用を事前に把握しておくことが重要です。
国際結婚をスムーズに進めるためには、適切な手続きや書類の準備、ビザ手続きなどの知識が重要です。国による違いもありますが、国際結婚手続きの初心者は「全ての国に共通する基本事項」をまず押さえて、それから、各々の国ごとに違いを調べるという手順を踏むことがお奨めです。
このガイドが、国際結婚を考える皆さんの参考になれば幸いです。
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