ここでは、現在のカテゴリーの在留資格「技術・人文知識・国際業務」のうち、以前のカテゴリーでの在留資格「技術」の部分のことを「技術ビザ」との旨で表現しております。
‡イミグレーション戦略コンサルタント兼行政書士からの技術ビザの一口アドバイス‡
技術ビザも「大卒」が一応の原則です。ただ、大卒でなくても、優秀な技術者はたくさんいます。そこで、実務経験等があればよいことになっています。ただ、これは基本的には従来、10年必要とされてきたのです。しかし、変動の激しいIT業界で、本当に10年も必要かは、立法論としては問題です。この点、実務的にはきっちり10年要求されるのが基本です。過去に私が扱った例ですが、年収1000万近いIT技術者が不許可になったことがありましたから、高収入の人でも不許可になることはあります。それから、最近は資格試験を活用していますが、IT技術者はこの種の試験を嫌う傾向があるようです。
- 技術ビザの法務Q&A
- Q1: 技術ビザとは、どのようなものですか?
- Q2: 技術ビザの要件(基準)は何でしょうか?
- Q3: 法務大臣が告示をもって定める情報処理技術に関する試験に合格し又は法務大臣が告示をもって定める情報処理技術に関する資格を有しているとき、とはどういう場合のことですか?
- Q4: 上記の資格試験は何か偏っているような気もいたしますが、他の試験の見込みはないのですか?
- Q5: 私は、大卒ではないのですが、日本で10年以上の実務経験があります。基準を充たしますか?
- Q6: 私は、大卒でもなく、また実務経験等も10年もないですが、年収は1000万円近いです。また、専門のIT技術者には、資格試験を軽視する傾向もありますから、IT技術の資格はとっていません。許可されますか?
- Q7: 海外の大学は認められない場合があると聞きましたが、それはなぜですか?
- Q8: 理系大学を出たあと、メーカーで、技術翻訳等の仕事を行っているときは、「技術ビザ」ですか「人文国際ビザ」ですか?
- Q9: 私は技術ビザを持っていますが、この度、転職することになりました。同一職種の同一業務です。この場合、次回の更新時まで何もしなくてよいという話があるそうですが、本当ですか?
- Q10: 技術ビザの申請のポイントは何でしょうか?
- Q11: 複数の申請人(例、10人)を同時申請した場合、そのうちの一部の申請の資料不足等が全体に影響し、審査が遅れることはあるでしょうか。
- Q12: 追加資料請求されるとどの程度遅れますか。
- Q13: 追加資料請求されるのは申請をしてからいつころですか。
- Q14:結局、入管の「技術」の「認定」の場合、どのくらい審査期間がかかるものなのでしょうか。
- Q15: 学歴証明事案の盲点を、「追加資料請求」を予防するという見地から、教えて下さい。
- Q16: 職歴証明事案の盲点を、「追加資料請求」を予防するという見地から、教えて下さい。
- Q17: 履歴書の盲点を、「不許可」を予防するという見地から、教えて下さい。
技術ビザの法務Q&A
ここでは技術ビザの法務に関して、専門の移民法律家がQ&A形式でお答えいたします。
Q1: 技術ビザとは、どのようなものですか?
A1: 技術ビザとは、本邦の公私の機関との契約に基づいて行う理学、工学その他の自然科学の分野に属する技術又は知識を要する業務に従事する活動(教授、投資・経営、医療、研究、教育、企業内転勤、興行の活動を除く。)のためのビザであり、一般には理系の大卒者が取得します。
Q2: 技術ビザの要件(基準)は何でしょうか?
A2: 申請人が次のいずれにも該当していることです。ただし、申請人が情報処理に関する技術又は知識を要する業務に従事しようとする場合で、法務大臣が告示をもって定める情報処理技術に関する試験に合格し又は法務大臣が告示をもって定める情報処理技術に関する資格を有しているときは、1に該当することを要しない、とされています。
1 従事しようとする業務について、これに必要な技術若しくは知識に係る科目を専攻して大学を卒業し若しくはこれと同等以上の教育を受け又は10年以上の実務経験(大学、高等専門学校、高等学校、中等教育学校の後期課程又は専修学校の専門課程において当該技術又は知識に係る科目を専攻した期間を含む。)により、当該技術若しくは知識を修得していること。
2 日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること。
Q3: 法務大臣が告示をもって定める情報処理技術に関する試験に合格し又は法務大臣が告示をもって定める情報処理技術に関する資格を有しているとき、とはどういう場合のことですか?
A3: 以下の場合です(最近改正 平成15年05月30日法務省告示291号。平成16年08月27日法務省告示363号)。
1 情報処理技術者試験の区分等を定める省令(平成9年通商産業省令第47号)の表の上欄に掲げる試験のうち次に掲げるもの
イ システムアナリスト試験
ロ プロジェクトマネージャ試験
ハ アプリケーションエンジニア試験
ニ ソフトウェア開発技術者試験
ホ テクニカルエンジニア(ネットワーク)試験
ヘ テクニカルエンジニア(データベース)試験
ト テクニカルエンジニア(システム管理)試験
チ テクニカルエンジニア(エンベデッドシステム)試験
リ 情報セキュリティアドミニストレータ試験
ヌ 上級システムアドミニストレータ試験
ル システム監査技術者試験
ヲ 基本情報技術者試験
2 平成12年10月15日以前に通商産業大臣が実施した情報処理技術者試験で次に掲げるもの
イ 第一種情報処理技術者試験
ロ 第二種情報処理技術者試験
ハ 特種情報処理技術者試験
ニ 情報処理システム監査技術者試験
ホ オンライン情報処理技術者試験
ヘ ネットワークスペシャリスト試験
ト システム運用管理エンジニア試験
チ プロダクションエンジニア試験
リ データベーススペシャリスト試験
ヌ マイコン応用システムエンジニア試験
3 平成8年10月20日以前に通商産業大臣が実施した情報処理技術者試験で次に掲げるもの
イ 第一種情報処理技術者認定試験
ロ 第二種情報処理技術者認定試験
ハ システムアナリスト試験
ニ システム監査技術者試験
ホ アプリケーションエンジニア試験
ヘ プロジェクトマネージャ試験
ト 上級システムアドミニストレータ試験
4 シンガポールコンピューターソサイエティ(SCS)が認定するサーティファイド・IT・プロジェクト・マネージャ(CITPM)
5 韓国産業人力公団が認定する資格のうち次に掲げるもの
イ 情報処理技師(エンジニア・インフォメーション・プロセシング)
ロ 情報処理産業技師(インダストリアル・エンジニア・インフォメーション・プロセシング)
6 中国信息産業部電子教育中心が実施する試験のうち次に掲げるもの
イ 系統分析員(システム・アナリスト)
ロ 高級程序員(ソフトウエア・エンジニア)
ハ 程序員(プログラマ)
7 フィリピン・日本情報技術標準試験財団 (JITSE Phil)が実施する基本情報技術者 (ファンダメンタル・インフォメーション・テクノロジー・ エンジニア)試験
(平成15年05月30日法務省告示291号で追加。)
8 ベトナム情報技術試験訓練センター (VITEC)が実施する基本情報技術者 (ファンダメンタル・インフォメーション・テクノロジー・ エンジニア)試験
(平成15年05月30日法務省告示291号で追加。)
9 ミャンマーコンピュータ連盟(MCF)が実施する基本情報技術者(ファンダメンタル・インフォメーション・テクノロジー・エンジニア)試験
(平成16年08月27日法務省告示363号で追加。)
10 財団法人資訊工業策進会(III)が実施する軟体設計専業人員(ソフトウェア・デザイン・アンド・ディベロップメント・IT・エキスパート)試験
(平成16年08月27日法務省告示363号で追加。)
[人流209・46]
Q4: 上記の資格試験は何か偏っているような気もいたしますが、他の試験の見込みはないのですか?
A4: 他の国のIT技術の資格試験も随時、検討中ですから、最新の情報を得るようにされてください。
Q5: 私は、大卒ではないのですが、日本で10年以上の実務経験があります。基準を充たしますか?
A5: 実務経験は日本のものでもかまいません。但し、実務運用上、審査官によっては、日本での実務経験を認めないことがありますから、ご注意ください。
Q6: 私は、大卒でもなく、また実務経験等も10年もないですが、年収は1000万円近いです。また、専門のIT技術者には、資格試験を軽視する傾向もありますから、IT技術の資格はとっていません。許可されますか?
A6: いかに年収があっても基準を充たさない以上、技術の在留資格(ビザ)では許可されません。硬直的であることについては従来から、問題にはなっています((社)日本経済団体連合会がときどき提言を行っています。)。
Q7: 海外の大学は認められない場合があると聞きましたが、それはなぜですか?
A7: 海外の場合、日本の大学と制度が大きく異なることがあります。たとえば、中国の大学には、日本の大学では存在しない専攻も多くあります。このような場合、「技術」の在留資格(ビザ)が与えられるかは、その教育機関ごとに、学校のレベル等を確認のうえ、判断されることになります。したがって、必ずしも、このビザに言うところの「大学」には当てはまらないことがあるためです。
Q8: 理系大学を出たあと、メーカーで、技術翻訳等の仕事を行っているときは、「技術ビザ」ですか「人文国際ビザ」ですか?
A8: どちらもありえます。それぞれのビザの基準にあてはめて、確実に立証できるビザを申請することになるでしょう。この点、「技術」と「人国」の境目は法文以上に近接しています。たとえば、WEBデザイナーやWEBプロデューサーはIT技術者だから「技術」なのでしょうか。ところがそうとは限らないのです。デザイン業務を主たる職務と解する場合、「人国」があり得ます。人国の場合、「技術」と職務経験期間で差異を生じることとなります。
Q9: 私は技術ビザを持っていますが、この度、転職することになりました。同一職種の同一業務です。この場合、次回の更新時まで何もしなくてよいという話があるそうですが、本当ですか?
A9: その話はよく聞きますが、その場合は就労資格証明書を取得しておくべきです。さもないと、次の更新のときに不利になることがありますし、もしそもそも、就労の認められない会社だった場合は、突然、不許可になって、帰国することになりかねません。また、更新というのは、通常、期限直前に行いますが、不許可になったときは、以前でいえば、短期ビザに変更になり、現在でいえば「出国準備」を目的とする「特定活動」の在留資格ですが、いずれにせよ、出国準備期間となります([注]悪質な事案等では出国準備期間が付与されない例もあります。)。この場合、就労はできません。つまり、仮に再申請したとしても、審査期間中は、働けず、休業するはめになります(もし働いていたら、当然、変更も不許可で然るべきですし、それ自体「不法就労」です。)。
Q10: 技術ビザの申請のポイントは何でしょうか?
A10: まず、学歴上の専攻科目と、従事しようとする、業務との一貫性です。また、語学力も含めた業務遂行能力もポイントです。さらに、大学等での成績や出席率も関係があります。そして、受け入れ先の企業については、経営の安定性や継続性が審査されます。
Q11: 複数の申請人(例、10人)を同時申請した場合、そのうちの一部の申請の資料不足等が全体に影響し、審査が遅れることはあるでしょうか。
A11: 建前としては、そのようなことは無いと回答されることが多いと思われます。なぜなら、申請はあくまで申請人毎の個別の判断だからであり、一人の申請に資料不足等があるからといって、残りの申請人にまで影響が及ぶことに合理的理由は、通常は、無いからです。しかし、入管では、これに限らず、建前の回答と実際の現場での運用は乖離しています。すなわち、これについては、実際には、事務処理の都合上、同時申請の全件を一括して処理されることが多く、その結果、全体の審査が遅れることがあると解されます。
したがって、これを防ぐには、職歴証明案件や短大卒業案件等の問題の出やすい申請を、問題の少ない申請から分離し、別個独立の申請として、別個に申請することを検討するべきでしょう。その分、会社側の資料を共通資料で済ますことができなくなりますが、やむを得ないでしょう。
なお、この問題に関し、本省入在課に照会したところ、一般論としては、全件を一括処理する傾向があるのは事実であるが、事前ないし審査中の打診の余地はあるとの回答でした。ただ、現場での実感としては、地方局の裁量論とか、あるいは、「多忙(人手不足)」が免罪符になっており、打診しても芳しくない場合もあります。また、入管ユーザーの側からすれば、本当に多忙なのかは、分かりませんので、「多忙」と言われれば、反論できません。
Q12: 追加資料請求されるとどの程度遅れますか。
A12: 前提として、そもそも追加資料請求されない事案も多いことに注意して下さい。追加資料請求される事案はまだ丁寧な対応を受けているほうで、追加資料請求されずに、いきなり、不許可になる場合も多いです。不許可になれば、再度申請するにせよ、原則、全資料を揃え直すことになってしまいます。
追加資料請求されると、数週間から1か月前後遅れる場合が多いでしょう。
Q13: 追加資料請求されるのは申請をしてからいつころですか。
A13: 数週間で来ればまだマシなほうで、上場企業で約40日経ってから追加請求が来た事案もあります。この場合、結局2か月かかってしまいます。このように、追加請求が来ると、遅れが目立つので、いかに申請時に、追加請求されそうな資料まで予想して任意に提出し、また、複数同時申請の場合、問題の多い申請は分離申請する等の工夫をし、完全な資料を用意するかが大切です。
Q14:結局、入管の「技術」の「認定」の場合、どのくらい審査期間がかかるものなのでしょうか。
A14:結局、バラバラです。極端な話、1週間でもあり得るし、2週間、3週間は信用力の高い事案なら、珍しくないでしょう。他方、2か月以上も珍しくないでしょう。したがって、従来、たとえば、1か月以内が多かったからといって、ビジネスの予定として、「1か月」だと想定するのは危険なことです。「3か月」はみるべき場合が多いでしょう。遺憾ながら、ビジネスベースの運用ではない、国際的に通用しない、上場企業が機動的に人材を確保できない、と評価されてもやむを得ないと思われます。ただ、これでも身分系の在留資格に比べれば、就労系の在留資格の審査のほうが早いのです。ちなみに、外国の立法例では、10万円程度の特急料金を支払うと優先的に審査されるというシステムの国もあります。日本ではそこまで割り切った制度が出来るかどうか、というところです。入管職員の時給は安くても数千円以上で、仕事の内容が高度なので、高くてもやむを得ません。もはや「税金」ですべてを負担するのは無理なのではないでしょうか。利用者負担で検討してよいと解されます。
Q15: 学歴証明事案の盲点を、「追加資料請求」を予防するという見地から、教えて下さい。
A15: 盲点など無数にありますが、学歴証明事案の盲点の一つは、「学位証明」です。海外の大学や短大の場合、学位をおよそ授与しない場合があります。卒業証明書をよく見て記載があるか確認し、記載がないときは招聘会社に、その大学では学位を授与しないのか、つまり、学位の証明が得られないのか、本人に確認するよう依頼し、授与するなら学位の証明書を用意するよう伝え、授与しないなら学位の証明書は無い(授与しない制度である)旨の一筆を申請資料に、「初めから」添えて、申請することを検討するべきでしょう。さもないと、「学位証明書」という追加資料請求を出される根拠にされてしまいます。
この場合、授与しない制度ならば、授与しない制度である旨の回答書を提出するのですが、このような要領を事前に知っている人は稀でしょう。ちなみに、日本の短大の場合、従前は学位はありませんでした。
入管の場合、必須資料かは入管の裁量で決まり、入管が必要と言えば必要になってしまうのです。そのうえ、多忙を理由に援用されると許されるという特質があるのです。
Q16: 職歴証明事案の盲点を、「追加資料請求」を予防するという見地から、教えて下さい。
A16: 職歴証明事案の盲点の一つは、「高校の卒業証明書」です。職歴証明の場合でも高校の卒業証明書は付けることを検討するべきでしょう。さもないと、追加資料請求を出す根拠にされてしまいます。なお、成績証明書も望ましいといえるでしょう。但し、職歴証明事案の場合で、これらは、常に必ず必要なものではないことも知っておく必要があります。
Q17: 履歴書の盲点を、「不許可」を予防するという見地から、教えて下さい。
A17: 履歴書の盲点の一つは、学校の卒業年月日その他の年月日を挙げることができます。しばしば、この数値が、卒業証明書等と齟齬を来たす場合があります。たとえば、過失で誤った年月を記載することもあるわけですが、その場合、たとえ過失であったとしても、「虚偽申請」で不許可の理由になります。なお、仮に提出後に齟齬を認識した場合、不許可になる前に、その件を敷衍(ふえん)した上申書等を作成する場合が多いでしょう。