Overstay and Mixed Marriage in Japan
「オーバーステイと国際結婚」は、 大きく分けると、収容されているケース(収容案件)と収容されていないケース(在宅案件)に分けられます。実務的には、収容されたケースも多く扱うと言えます。収容されたときは、もう手遅れな場合が多いのですが、収容されないと、危険を認識しないとみえることがあり、病気にならないと医者に行かないのと同じという事象もあるのは否定できません。
上級ビザ講座
上級ビザ講座2 「オーバーステイと国際結婚。」
日本でのオーバーステイ(不法滞在)は、超過滞在とも言われますが、入管や警察では不法滞在と言います。一般にはオーバーステイという語が用いられ、あまり違法性を感じないかもしれませんが、逮捕されることもありますし、懲役刑を科せられることもあります。
オーバーステイ(不法滞在)はどのような場合に生じるか
オーバーステイ(不法滞在)は国際結婚との関係で、問題になることが多いですが、結婚とは無関係で、就労(たとえば、人文国際等)で不法滞在になることもありますし、日本で15年間住んでいた定住者の在留資格の人でも、1週間遅れただけで不法滞在です。 もし、ある日本人が、オーバーステイ(不法滞在)の外国人と結婚しようとされるとき、オーバーステイ(不法滞在)という法的事実が問題になります。また、外国人同士でもこれは問題になります。
オーバーステイ(不法滞在)で結婚できるか
オーバーステイ(不法滞在)でももちろん、結婚自体はできます。婚姻までもが「不法」になるわけではありません。この点、オーバーステイ(不法滞在)では結婚できないと考えているかたも多いようです。なるほど、確かに結果的には婚姻が困難になったり、事実上できないことはよくあります。そのため、そういう話を聞くことがありえます。しかし、法律上できないわけではありません。ただ、オーバーステイ(不法滞在)でも結婚できることと、日本にいられるか否かは法的には別の問題です。ですので、オーバーステイ(不法滞在)で結婚するときはこの点に留意が必要です。
つまり結婚しただけでは、オーバーステイ(不法滞在)には変わりなく、日本にいられることが保障されるわけではないです。
オーバーステイの種類等
オーバーステイでは意図的なオーバーステイと、非意図的なオーバーステイに分かれます。非意図的なオーバーステイはさらに、過失でオーバーステイしたケースと、第三者にオーバーステイ「させられた」ようなケースを含みます。
したがいまして、オーバーステイだから一概に必ず責任があるとは言えないわけです。オーバーステイで、縁あって、生涯のパートナー、結婚相手を得た場合、パートナーとの協力も重要です。本国の婚姻関係や、子どもや親族のことや将来のこともあるわけですから、適正な在留資格を求めるときは、完璧に準備したうえで進めることが本来は必要です。さもないと、将来、思わぬところで、問題が生じます。実例として、杜撰な準備のため、ご結婚され、かつ、お子様まで出生されていながら逮捕、そして退去強制された例があります。
オーバーステイの結果はどうなるか
オーバーステイでは、最悪の場合、離れ離れになります。「こんなことになるとは知らなかった。」というお話をよく聞きます。しかも少しも珍しくはありません。ちなみにいったん離れ離れになったあと、相手のパートナーを再び、日本に呼び寄せることが可能か否かの保障はまったくありません。ですので、半永久的にそのままの場合もあります。特に、オーバーステイでは、自己の的確な事実関係の説明や権利主張が甘い場合があります。単なる感情的主張では役所には通用しません。
オーバーステイでは何から始まるか
いずれにせよオーバーステイは必ず入管の調査部門ないし警備部門の調査を受けることになります。オーバーステイ(不法滞在)の入管行政手続は、まず、退去強制事由に該当すると思われる外国人が、入国警備官の違反調査を受けるところから始まります。調査を受ける端緒としては、自庁探知、警察・海上保安庁等の関係機関からの通報、一般人からの通報、自首ならぬ自主出頭申告等があります。オーバーステイでは、いきなり警察の逮捕や摘発から始まるケースも普通にあります。
オーバーステイの調査はどうなるか
入国警備官の違反調査の過程で、収容するかどうかを決めます。たとえば、不法滞在者と婚姻して夫妻で出頭した場合、内容次第で、ここでいきなり収容されることもありえます。もっとも、厳密に言えば、法律上は、全件収容主義ですので、結局は全員収容されるべき筋合いなのですが、在宅案件とされた場合、この初回出頭時点等では収容手続は採られません。
次にいつ呼ばれるのかは、個別の事情によりますますので、一概にいえません。入管では、三段階で調査・審査されます。したがって、仮放免、入国審査官の違反審査、特別審理官の口頭審理、という手続が想定されるのですが、在宅案件になったときはそれらを意識することは少ないものです。言い換えれば、在宅案件なのか収容案件なのかで全く違います。
実例として、これは配偶者事案に限りませんが、出頭の際の勤務先とトラブルを起こして辞めたにも関わらず、入管での手続を怠った等のため、入管に嫌疑をかけられて、仮放免を延々と1年以上も続けた、という例があります。また、偽装結婚を疑われ、3年間放置された例もあります。仮放免では就労はできません。
オーバーステイ(不法滞在)と区市町村の窓口
区市町村の窓口は、(地域にもよりますが)必ずしもオーバーステイ(不法滞在)の外国人の対応には十分ではないです。その結果、明らかに誤った情報をオーバーステイ(不法滞在)の外国人側に伝える場合があります。上掲のとおり、オーバーステイだから必ず本人に責任があるとは言えないケースもあり、中には犯罪被害にあってオーバーステイさせられているケースもあります。人身売買の被害者などが特にそうだと指摘できます。しかし市区町村が不親切な情報を与え、それを鵜呑みにして、オーバーステイ(不法滞在)で強制送還された例は多数あります。区市町村の窓口では、オーバーステイ(不法滞在)であるため、元々煩雑な国際結婚がさらに手続的負担が重くなります。たとえば、受理照会扱いにされ、意図的に法務局への書類送付を遅らされ、婚姻が遅れることもあります。
この点、同じ区市町村でも戸籍と(旧)外国人登録は全く違いました。戸籍は指導監督が法務局、と(旧)外国人登録は管理が入国管理局、という差異が大きな違いをもたらしていました。無論、いずれも直接の窓口は区市町村です。しかし、区市町村の戸籍課の後ろには、法務省法務局、(旧)外国人登録の後ろには法務省入国管理局が、上級行政庁として付いています。(旧)外国人登録のほうは、入管の出先機関のようなものでした。イミグレーション戦略コンサルティングファームの行政書士あさひ新日本では、(旧)外国人登録についても、様々な知見を今でも残しており、新たな在留管理制度の今後でも活かせるようにしております。
また、たとえば、婚姻届を何らかの理由で「不受理」とされる場合はよくあります。オーバーステイ(不法滞在)かどうかに関係なく、受理照会になると、1か月程度かかるのは普通です。2年経っても結果が出ていない事例も実在します([注]入管ではなく、法務局の婚姻届の受理審査の話です。)。そして、そういう場面はオーバーステイ(不法滞在)では婚姻届に限らず、色々な役所で生じます。
オーバーステイで不許可になった場合はどうなるか
オーバーステイ(不法滞在)で入管での手続をどう感じるかは、千差万別ですが、実際に不許可になって、奥様が退去強制させられ、学校を卒業して以来、10年勤めた大手企業を辞めて、奥様の母国(南米)まで行かれた日本人男性もおられますし、そういった事例は珍しくありません。経済的価値に算定困難ですが、逸失利益は1億円以上の違いが出るのではないでしょうか。
またオーバーステイでの仮放免許可は就労許可ではないので、もしも仮放免状況が1年、2年、5年、10年と継続している事例は、それも逸失利益でみると、1年でも数百万、10年では、数千万円は失っています。お金の問題ではないですが、様々な現場を拝見すると、イミグレーションコンサルタントは、オーバーステイに付随する諸問題につき、真に専門でない限り、人の人生を決定的に変えてしまうので、扱うことは許されないというべきです。