ここでは家族滞在ビザに関して、専門のイミグレーション戦略コンサルタント兼行政書士がQ&A形式でお答えいたします。
‡イミグレーション戦略コンサルタント兼行政書士からの家族滞在ビザの一口アドバイス‡
この家族滞在ビザの一般的なポイントは、まず、申請人の配偶者等が、日本での在留資格に該当する活動を、適正に行う(行っている)ことです。また、生活費、経費支弁能力が十分にあることも必要です。生活費の証明(疎明)については、慎重かつ十分に立証資料を用意することが推奨されます。さらに同居ないし在留の必要性も審査の対象になります。また婚姻関係を仮装したりしないようにすることも必要です(犯罪にもなり得ます。)。もし虚偽申請が露見したら、今後全てのビザ申請で、非常に不利な状況になります。
- 家族滞在ビザの法務Q&A
- Q1: 家族滞在ビザとは、どのようなものですか?
- Q2: 家族滞在ビザの要件(基準)は何でしょうか?
- Q3: 家族滞在ビザのポイントは何でしょうか?
- Q4: 家族滞在ビザは内縁でも取れますか?
- Q5: 家族滞在ビザでは、「子ども」は成年に達していてもよいでしょうか?
- Q6: 就学や研修のビザで家族を呼ぶにはどうしたらよいですか?
- Q7: 私の妻は、本国で働いており、独立した収入がありますが、日本へ家族滞在ビザで呼べるでしょうか?もちろん、日本では働きません。
- Q8: 私の子どもは、本国に生活の基盤があるのですが、今度、1回の滞在で90日を超えて在留する予定があります。そこで、家族滞在ビザで呼びたいのですが、可能でしょうか?
- Q9: 日本の在留資格制度というのは、それぞれ与えられた資格の範囲内の活動のみができると聞きました。とすると、家族滞在ビザの人は、留学ビザを持っていない以上、大学に入ることはできないのでしょうか?
- Q10: 家族滞在ビザでは原則として働けないとのことですが、どうすれば働けますか?
- Q11: 家族滞在ビザの在留期間の考え方の注意点を教えてください。
- Q12: 家族滞在が認められない場合、短期滞在の親族訪問で招へいすることは可能でしょうか。また、その場合にどの程度の期間、在留できるものでしょうか。
家族滞在ビザの法務Q&A
Q1: 家族滞在ビザとは、どのようなものですか?
A1: 家族滞在ビザとは、入国管理法では、同法の別表の第一の一の表、二の表又は三の表の上欄の在留資格(外交、公用及び短期滞在を除く。)をもつて在留する者又は四の表の留学、就学若しくは研修の在留資格をもつて在留する者の扶養を受ける配偶者又は子として行う日常的な活動、と規定されていますが、就学と研修は法務省令で除外されてます。
要するに、分かりやすくいえば、「家族滞在ビザ」で配偶者や子どもを呼べるのは、教授、芸術、宗教、報道、投資・経営、法律・会計業務、医療、研究、教育、技術、人文・国際、企業内転勤、興行、技能、文化活動、留学、の各ビザ(在留資格)、です。
留学ビザで呼べるのが少し意外かもしれません。
Q2: 家族滞在ビザの要件(基準)は何でしょうか?
A2: 申請人が入管法別表第一の一の表若しくは二の表の上欄の在留資格、文化活動の在留資格又は留学の在留資格をもって在留する者の扶養を受けて在留することです。
もう少し分かりやすくいえば、教授、芸術、宗教、報道、投資・経営、法律・会計業務、医療、研究、教育、技術、人文・国際、企業内転勤、興行、技能、文化活動、留学、の各ビザ(在留資格)、で在留するかたの扶養を受けて在留することです。
Q3: 家族滞在ビザのポイントは何でしょうか?
A3: 「日常的な活動」とは、就労を含まないことに注意してください。たとえば、何ら許可を得ないで、家族滞在ビザのかたが、パートで働いたら、それは「不法就労」です。
Q4: 家族滞在ビザは内縁でも取れますか?
A4: 取れません。内縁関係が保護されるというのは入管法では特殊例外的場面です。
この点、内縁関係が入管法の保護対象から基本的に除外されているのは、民法177条の法意に類似すると言えましょう。すなわち、177条は「公示の原則」を定め、いわゆる表示主義ないし、外形主義の見地から実体関係というよりはむしろ画一的に処理するほうを優先させます。これは、もし、実体関係を審査すると、民事手続きは渋滞するから、というのが一つの理由です。そこで、同じようなことが入管の手続きにも言えるといえましょう。たとえば、外国の中には婚姻の届出のことを「登記」と称する国があるのです。「登記」して婚姻を公示させて法律関係の安定に資する、というわけです。そして、もし入管手続きで内縁関係を一つ一つ審査していたら、今でさえ渋滞しているのに、ますます渋滞して機能しなくなることでしょう。
なお、ちなみに「子」どもには、「養子及び認知された非嫡出子」は含まれます。ただ、養子というのも、法律上のものでなければなりません。しかし、養子縁組みしていないが、どうしてもその子を呼ばねばならない人道上の理由を証明できるときは、例外的に呼べることもありえます。
[注]日本人との養子縁組による在留資格には、外国人のこの「家族滞在」の場合よりもむしろ制限があります。現在、裁判になっていますが、不権衡ですので、法の欠缺として、是正されることになると思います。
Q5: 家族滞在ビザでは、「子ども」は成年に達していてもよいでしょうか?
A5: 差し支えありません。
[注]家族滞在の在留資格は日本人の家族のためのものではありませんので、ご注意ください。
Q6: 就学や研修のビザで家族を呼ぶにはどうしたらよいですか?
A6: 90日以内の親族訪問目的の短期ビザで呼ぶことは、要件を充たせば可能です。
Q7: 私の妻は、本国で働いており、独立した収入がありますが、日本へ家族滞在ビザで呼べるでしょうか?もちろん、日本では働きません。
A7: 一見呼べるようにも見えますが、日本に来てもなお、本国で収入がある場合は、このビザでは呼べないことがありえます。理由はあくまで「扶養を受ける」場合でなければならないからです。
Q8: 私の子どもは、本国に生活の基盤があるのですが、今度、1回の滞在で90日を超えて在留する予定があります。そこで、家族滞在ビザで呼びたいのですが、可能でしょうか?
A8: 家族滞在ビザも、本来、生活の本拠を日本にする場合のものですから、原則的にはこのビザは適用されませんが、事情によっては許可される可能性はあります。もし、不許可のときは短期ビザを申請することになります。
Q9: 日本の在留資格制度というのは、それぞれ与えられた資格の範囲内の活動のみができると聞きました。とすると、家族滞在ビザの人は、留学ビザを持っていない以上、大学に入ることはできないのでしょうか?
A9: これは就労とは異なり、可能です。違法にはなりません。ちなみに、留学ビザへの変更も可能です。ただし、留学ビザでは卒業すると、そのビザは変更せねばなりません。他方、家族滞在ビザは、大学の卒業とは関係ないですが、もし、扶養者が帰国することになると、それに伴い、在留が認められなくなります。このように、両ビザの意義・要件・効果を押さえてください。
Q10: 家族滞在ビザでは原則として働けないとのことですが、どうすれば働けますか?
A10: 資格外活動許可を申請してください。それで許可されれば就労できます。但し、稼働時間の時間制限等がありますからご注意ください。また、いわゆる風俗関係は、日本人等と異なり、認容されていないことにも留意してください。
Q11: 家族滞在ビザの在留期間の考え方の注意点を教えてください。
A11: たとえば「出入国管理外国人登録実務六法」(日本加除出版)という実務書には、在留期間は、「3年、2年、1年、6月又は3月」、となっています。では、たとえば、技術ビザのある外国人が家族を日本に家族滞在で招聘したいと考え、ただ、半年間だけ、在留予定期間として記入して、申請したときはどうなるでしょうか。
東京入国管理局(の現場)では、家族滞在につき、以下のような見解の「運用」がありました。
その要旨は、そもそも、家族滞在には、あたかも民事法でいうような(イメージとして、抵当権や保証債務)付随性・随伴性があり、したがって、本体たる技術ビザの在留期間には、現在、「3年又は1年」しかない以上、家族滞在もそうなり、よって、設例のような申請は「不許可」であると。これは現実に、これを理由に不許可案件があります。
では、2年は何に使うかというと、たとえば、これは「留学」です。また、「6月又は3月」が何かというと、これはたとえば「興行」です。
以上の「考え方」については、業界の実務書でも必ずしも明確には書いてありません。現実に実務に日々従事している人でないと知りえないことの一例です。たとえば、当方に聞く前に別の事務所に電話された方は、「6(か)月という理由で家族滞在が不許可になることはない。」と言われたそうです。誤りと断じるのは酷かもしれませんが、入管では、何事も絶対にあり得ないと回答することは危険です。実務書や法律書だけを見ても知りえない話ですので、無理もないかもしれません。ただ、いわゆる「現場」の扱いであるとして、家族滞在につき、別の解釈と運用がありうることを留保します。
Q12: 家族滞在が認められない場合、短期滞在の親族訪問で招へいすることは可能でしょうか。また、その場合にどの程度の期間、在留できるものでしょうか。
A12: 数年前、家族滞在が不許可になった事案につき、元短期滞在部門の責任者かつ、当時、家族滞在担当の審査官氏に打診したところによれば、その要旨、東京入管では、数年前から、短期滞在の更新を従来よりも比較的緩やかに認めるケースも出てきている、私は短期滞在部門にいたのだから間違いない、したがって、当該案件につき、家族滞在を不許可にしても不当ではない、との趣旨の回答がされたことがありました。
しかし、実際の短期滞在部門等の運用をみると、そのように弾力的とは必ずしも思われません。
短期での招へいの可否も、他の在留資格と同じで、一律の基準は無く、個別に属人的に判断されます。不法就労の動機がありそうな人は困難になり、大企業関係者は円滑な場合が多いでしょう。仮に上陸した後の更新については、ほとんどの人は、入管の「行政指導」で断念しているのが実態と思われます。ただ、実務上は、短期滞在の更新を一律に検討対象から除外するのは的確ではありません。射程には入れておくべきであると解します。
[注]実務上の実感として、短期滞在の更新はともかく、出準の特活は随分と「弾力的」に運用されているように見受けられます。